NNAカンパサール

アジア経済を視る April, 2017, No.27

『世界でトヨタを売ってきた。』

青年のころ「チベットに行きたい」と強く思った著者。トヨタの海外事業に職を得て、新興国を中心に世界75カ国・地域で「道を創る仕事(パイオニアワーク)」を40年続けてきた。その一覧を見ると、ある、ある、ある、おなじみのアジアの国・地域が。

アジアは法制度が未整備、インフラ事情も芳しくない。さらに政治的要素などさまざまなリスクがあり、著者が仕事を始めた1970年代には今よりもさらに「とんでもない」状況であったろうことは想像に難くない。だが著者は「経済活動の山谷をリスクという概念で捉えるのではなく、成長過程のプロセスと捉えられるかどうかが、新興国ビジネスの成否を分ける。市場規模が拡大していく中で多様な変化があることは、多彩な新規ビジネスのチャンスにあふれている」と言う。ピンチはチャンスなり。

環境の変化の激しい新興国ではときどきの変化に一喜一憂せず、市場の底流を探ることが重要――など、アジアの国・地域で奮闘中のビジネスパーソンにヒントとなりそうな言葉は多い。


『世界でトヨタを売ってきた。』

岡部聰 開拓社
2016年8月発行 1,500円+税

将来に向け成長気運の強い新興国ほど、夢を強く抱いている(本書より)

<目次 のぞき見>
  • ・悪路と難所だらけの新興国を中心とした海外事業展開
  • ・新興国ビジネスの成否は現地パートナーで決まる!
  • ・新興国ビジネスの現場から学んだ12のポイント
  • ・パイオニアワークの原点は、ヒマラヤにあった
  • ・パイオニアワークの扉を開く方法

岡部聰(おかべ・あきら)

1947年東京生まれ。66年東京工業大学工学部入学。70年に東工大ヒマラヤ遠征隊でネパール・ヒマラヤ試登、現地山村で簡易水道と無動力ロープウエーを建設。71年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)に入社し、海外市場調査を担当。一貫して新興国事業に携わる。2012年に取締役退任、エグゼクティブアドバイザーに就任。

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