日本のプロバスケットボールＢリーグが、アジア屈指のバスケ大国である中国のプロリーグＣＢＡとの連携強化に動き出している。クラブ間の交流に向けた試みを進め…

中国

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「Ｂリーグとしてアジア市場との強い結びつきを持っていくことは必要不可欠だ」。Ｂリーグの島田慎二チェアマンはこう語気を強める。
島田氏は５日、北京市で中国バスケットボール協会の姚明（よう・めい）会長らと面会し、ＣＢＡの試合を視察した。両リーグのサラリーキャップ（年俸上限制度）や外国人の出場制限など多方面にわたり意見を交換。リーグ間やクラブ間の交流、競技面、ビジネス面を視野に戦略的パートナーとして関係を強化していきたい意向を伝えた。会談を終えた島田氏は「Ｂリーグが大きく飛躍しようとしていることを評価していただいた。今回の会談を機に、アジアのバスケを盛り上げていくための交流を深めていきたい」と話した。
中国訪問の目的は、2026年からの将来構想を見据えたアジアでの種まきだ。
Ｂリーグはバスケを通じてアリーナを中心に集客力を高め、地域の活性化につなげる構想を描いている。26～27年シーズンから新たなトップカテゴリー「新Ｂ１」リーグを創設し、参入の条件として「観客席5,000席以上のアリーナを保有」や「売り上げ12億円」など、ビジネス面を重視した基準を設けた。
足元ではクラブにとって大きな要となるアリーナの整備が日本各地で相次ぐ。21年にはＢリーグ１部（Ｂ１）琉球ゴールデンキングスの本拠地である沖縄市でアリーナが完成。群馬県太田市でも今月、Ｂ１群馬クレインサンダーズのアリーナがオープンする。千葉県船橋市ではＢ１千葉ジェッツのホームとして、三井不動産などが出資する１万人収容のアリーナが来年開業予定だ。神戸市や東京都江東区青海でもアリーナの建設計画が進んでいる。
「バスケで日本を元気にしていくためには、日本各地に点在しているクラブが盛り上がらないといけない。地元の方にアリーナで試合を見てもらい、非日常感を感じてもらうことで、クラブの収益機会拡大にもつながる」と島田氏は話す。
多くの投資を呼び込んで地元を盛り上げていこうとする中、一方で「将来的に人口減少や過疎化が進む地域が増えていくことは避けられない」（島田氏）。地元だけでアリーナを満員にすることが難しくなったときに、入場者数に貢献するのがインバウンドだと力を込める。
■バスケを観光資源に
島田氏は新型コロナウイルス流行が落ち着き始めた昨年から、フィリピンや韓国、インドネシアなどのリーグ幹部らと交流を深めてきた。各地のメディアにもＢリーグの成長戦略をアピールし「ビジネスにつながる足がかりにすると同時に、海外選手にＢリーグに興味を持ってもらうことも狙っている」（島田氏）。
中でも中国は「アジアで最も大きなリーグで、素晴らしいプレーヤーも多い」と評価する。中国のバスケ人気は高い。中国国営中央テレビ（ＣＣＴＶ）で放送した21～22年シーズンの視聴者数は再放送を含めて３億8,000万人に達した。
競技人口も多く、ＣＢＡが21年末に発表した調査結果によると、中国のバスケの競技人口は約7,610万人で、日本の約220万人（18年時点）と比べても圧倒的な数を誇る。中国の競技人口を６～17歳の青少年に絞ると、バスケは全体の13.9％を占め、サッカーなどその他の人気球技を押さえて最も比率が高かった。
中国からのインバウンドは新型コロナ流行前の19年に950万人を超え、訪日外国人全体の３分の１を占めた。島田氏は、訪日人気が高い中国で日本のバスケの認知が広がれば、観光だけでなくスポーツ観戦を目的にする「スポーツツーリズム」にもつながると期待を寄せる。
■アジア枠を活用
ただ、既にＣＢＡという完成されたリーグがある中国から観戦目的のインバウンドを呼び込むのは容易ではない。島田氏はこうした事情も念頭に、Ｂリーグが20～21年シーズンから設けたアジア枠の活用を進めていく考えだ。
アジア枠は中国、韓国、フィリピンなどの選手が対象で、他の外国籍２人と同時にコートに立つことができる特別枠制度。アジアの選手がＢリーグで活躍するようになれば、日本にファンを呼び込み、ゆくゆくは外資企業のスポンサーの獲得やリーグの連携にもつながると見込む。
島田氏は「ビジネス面では入場者に貢献する部分と、投資を呼び込む部分のどちらも意識している。競技面でも、アジアの選手との対戦による日本選手の競技力向上につながる」と話す。Ｂリーグのトップクラブもアジア市場を重視しており、若い世代の交流や育成などを通じてクラブ間の橋渡し役を目指す考えだ。
「本当の意味で（国際戦略強化の）花が咲くのは５年後、10年後になるだろう。Ｂリーグを常に進化させて、成長していく姿を見せていくことがアジア市場を取り込むために重要だ」。島田氏はこう意気込む。
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＜メモ＞
ＣＢＡ（中国男子籃球職業聯賽）
中国のバスケットボール男子のプロリーグ。1995年に開幕した。2022～23年シーズンは20チームで構成しており、レギュラーシーズン42試合を戦った。年俸上限は600万元（約１億1,700万円）。
米プロバスケットボールＮＢＡのヒューストン・ロケッツで大型センターとして一時代を築いた姚明氏や、中国初のＮＢＡ選手となった王治シツ（シツ＝至におおざと、おう・じしつ）氏らスター選手を輩出した。姚氏は17年から中国バスケットボール協会の会長を務める。

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