【21年の10大ニュース】多難を極めた一年
今年を振り返ると、「多難を極めた」という表現がまず浮かぶ。新型コロナウイルスの感染者は断続的に増えて各州のロックダウン(都市封鎖)につながったほか、中国との関係は悪化の一途をたどった。しかし2大都市がロックダウンした中でも、国内経済がさほど低迷しなかったのは意外だった。第3四半期(7~9月)の国内総生産(GDP)は前期比1.9%減と、5四半期ぶりのマイナス成長となったが、消費が大きく落ち込んだわりには小幅で、国内経済の底堅さが強調されたと言える。
水素や再生可能エネルギー産業が本格的に成長し始めたのも明るい側面だ。新型コロナの状況は全く見通せないものの、豪中関係はこれ以上は悪化しないだろう。中国は来年北京で冬季五輪を控え、環太平洋連携協定(TPP)への加盟申請も出しており、これ以上威圧的に振る舞うと墓穴を掘るのは明らかだからだ。
またニュージーランド(NZ)も、コロナの影響に明け暮れた年だった。国境封鎖の影響で、建築や運輸、ITなど多くの業界で人材不足が顕在化した。長年の懸案である住宅価格の高騰は今年も制御できず、住宅ローンの申請条件を厳格化したり、政策金利も2回引き上げたが、来年も懸案材料となるだろう。NZは安全保障面での危機が深刻化しない安心感があるが、コロナ禍の後始末はオーストラリアよりも長引くかもしれない。