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【アジアで会う】厳在漢さん 産業タイムズ社ソウル支局長 第348回 半導体最前線を26年間取材(韓国)

オム・ジェハン 1964年生まれ。韓国慶尚南道山清郡出身。韓国外国語大学中国語学科卒業後、東京国際大学に留学し、国際関係学で修士号を取得。95年の産業タイムズ社への入社以来、一貫して半導体など先端産業の最前線を取材してきた。ソウル特派員兼中国担当を経て、2006年からソウル支局長。15~16年にはソウル外信記者クラブ(SFCC)会長を歴任。今年は初の著書を出版した。趣味は登山。

厳さんは大学で中国語を専攻し、台湾での研修に参加するなどある程度は習得できたとの自信もあった。そこで今度は「同じ隣国の日本について学ぶ必要性を感じた」と当時を振り返る。その日本への留学が、「半導体記者」としての人生をスタートするきっかけになった。

当時の日韓関係は、韓国の民主化に伴い、日韓政府間で決着済みとされた過去の問題に対する異議申し立てがなされ、両国の市民社会も巻き込んで関係が悪化した時期だった。

厳さんは忙しい学業とバイトの合間を縫い、日本敗戦後に東南アジア各地で行われた連合軍BC級戦犯裁判で有罪判決を受けた朝鮮半島出身の人々を支える活動に、唯一の韓国人として関わった。彼らは巣鴨刑務所から出所した後も、日本人でもなく韓国人でもないという立場のため、傷痍(しょうい)軍人として受けるべき補償も受けていないという。厳さんは、共に活動する日本人弁護士や日本人学生の純粋な姿に心を打たれた。

■父の意に反し産業タイムズ社入社

厳さんは、大学院卒業後に日本で就職する考えはなかったそうだ。日本留学を決めた時、日本に対して否定的な感情を抱いていた父親に対して「仕事は韓国で探すから」と言って説得した経緯があったという。

しかし最終的には、アジア経済研究所の研究員を経て、業界紙の産業タイムズ社への入社を決める。アジア報道を強化したい産業タイムズ社にとって、日本語、韓国語、中国語、英語の4カ国語に通じた厳さんは、貴重な存在だった。

「半導体の『は』の字も知らなかった」と当時を振り返る厳さん。半導体の面白さに本格的に目覚めたのは、ソウル特派員兼中国担当として、現在は産業タイムズ社の会長を務める泉谷渉氏に随行し、中国の先端産業の黎明期を目の当たりにした時だ。駆け出しの記者だった厳さんは、泉谷氏の豊富な経験や知識に感服。「いつか自分も泉谷さんのように」と心に誓った。

厳さんは06年のソウル支局長への就任以来、半導体やディスプレーなど韓国の先端産業を精力的に取材。サムスン電子など韓国の大手企業のトップにも食い込んだ。

■産経記者の出国禁止解除に尽力

SFCCの会長時代には、朴槿恵(パク・クネ)元大統領の名誉を傷つける記事を書いたとして在宅起訴された産経新聞の加藤達也・元ソウル支局長の出国禁止解除に向けて尽力した。それは、厳さんが日系メディアの記者だからというわけではない。「外信記者の出国禁止は言論の自由に対する挑戦。民主主義の国において、あってはならないこと」との判断があった。

厳さんは、SFCCの理事会で青瓦台(大統領府)に手紙を送ることを提案。一部の欧米系メディアで働く韓国人記者からの反対に遭ったものの、1人1人に直接会って説得。手紙は、青瓦台の秘書室長宛に送られた。

その手紙は、加藤記者の出国禁止解除を直接求める内容ではなかったという。加藤記者の奥さんや母親が韓流のファンで、加藤記者の出国禁止を知ればどれだけ悲しむだろうかというものだった。手紙が到着した翌日、加藤記者の出国禁止の解除が決まった。「文章を書いて、あれほどうれしかったことはない」と厳さんは当時を振り返る。

■輸出管理厳格化でも存在感

日本政府が19年7月に半導体材料の対韓輸出管理を厳格化した時も、厳さんは存在感を見せた。日本側の真意を図りかねた韓国メディアや政府関係者がこぞって、厳さんに意見を求めたのだ。「韓日経済戦争勃発」などと過激な報道ぶりが目立つ中、厳さんは彼らに冷静な対応を求めた。

厳さんは、韓国政府が現在力を入れている部品や素材、設備の国産化について、「歩留まり(良品率)の高さが半導体の生命線。国産化に成功したとしても、日本製品を代替するのは簡単ではない」と指摘。日韓の分業体制の維持が大切だと訴える。

■人生初の著書を出版

厳さんは今年、初の著書を出版した。タイトルは「韓国先端産業最前線2021」(産業タイムズ社)。これまで記者として蓄積してきた経験や知識が凝縮された内容だ。

今後も執筆活動を通じて、韓国の経済や社会のありのままの姿を日本の読者に伝えていきたいと語る厳さん。そのバイタリティーの源は趣味の登山だ。

月に2回、ソウルに住む日系駐在員やその家族たちと一緒に、ソウル市内の山に登る。その登山会の名前は「オムレツゴー」。「厳(オム)さん、レッツゴー」が語源で、ある女性会員が命名したという。その気さくな性格は多くのメンバーから慕われている。(韓国編集部・坂部哲生)


関連国・地域: 韓国
関連業種: 社会・事件

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