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【「スポーツ×アジア」の新時代】地域づくりとスポーツの深い関係

「北海道を元気にするクラブ」とアジア

──三上GMインタビュー

北海道コンサドーレ札幌はこれまでにアジアからスター選手を数多く獲得するなど、サッカーを通じて北海道とアジアをつなげる取り組みを先進的に行ってきたことで知られる。これらの「アジア戦略」を10年ほど前から提唱し、具現化してきたキーパーソンが、株式会社コンサドーレの取締役ゼネラルマネージャー(GM)の三上大勝氏(47)だ。その狙いを聞いた。

三上 大勝氏 北海道室蘭市出身。室蘭大谷高(現北海道大谷室蘭高)や札幌大学でサッカー選手として活躍後、NEC山形サッカー部(現J2のモンテディオ山形)に所属。1995年に選手を引退し、モンテディオ山形法人設立準備室で同クラブ設立に尽力した。99年7月に北海道フットボールクラブ(現コンサドーレ)の事業部へ参加。強化部スカウト担当、強化部長を経て2013年から取締役ゼネラルマネージャー。

三上 大勝氏 北海道室蘭市出身。室蘭大谷高(現北海道大谷室蘭高)や札幌大学でサッカー選手として活躍後、NEC山形サッカー部(現J2のモンテディオ山形)に所属。1995年に選手を引退し、モンテディオ山形法人設立準備室で同クラブ設立に尽力した。99年7月に北海道フットボールクラブ(現コンサドーレ)の事業部へ参加。強化部スカウト担当、強化部長を経て2013年から取締役ゼネラルマネージャー。

「われわれはJリーグのサッカーチームを運営する会社ではない。あくまで『北海道を豊かに元気にする会社』。そのツールがたまたまスポーツであり、サッカーだっただけ」と三上氏は前置きする。

10年ほど前、クラブがホームタウンとする北海道や札幌の市民たち、企業や自治体などに対し、地域が成長するために何が求められているのかを聞いて回った時、成長する東南アジアに向けた地域のプロモーションや企業の進出・展開支援などの重要さを知った。それが三上氏がアジア戦略にたどり着いた理由だ。

クラブが2013年に初めてアジアから獲得したのはベトナムのレ・コン・ビン選手だ。日本でいえば長嶋茂雄氏のような国民的なヒーローを札幌ドームでプレーさせることで、ベトナム人にビールの商品名としてなじみのある「SAPPORO」が、実は都市名でもあると知ってもらえる機会になる。サッカーが地域を支援することができると考えた。

■サッカーだけでは広がらない

クラブがJ2に甘んじていた当時の総収入は10億円程度にとどまっていた。チーム強化費も足りない。経営陣からは「(地域のためにアジア戦略を進めるのは)立派なことだが、あしたの米を食べるのも大変な時にどうなのか」と疑問も呈された。

だが、三上氏は「サッカーだ、サッカーだとチームの戦力上の考え方だけにとどまっていたら、クラブの経営基盤としての可能性が広がらない」。チームを戦力上で強くする発想なら、ブラジルや欧州などからもっとうまい選手を獲得するのがよい。あえてサッカーが絶大な影響力を持つアジアの選手を獲得することの重要性を訴えた。

レ・コン・ビン選手加入から1年後、広告代理店がベトナムで調べたところ、「海外旅行で行きたい都市」の1位にいきなり札幌が躍り出るなど、「レ・コン・ビン効果」が出た。地元の観光業界や自治体などから「サッカークラブはこんな使い方もある」と知ってもらえたことは大きな成果だったという。

■「アジアと北海道のつながり」

コンサドーレの練習場はお菓子のテーマパーク「白い恋人パーク」に隣接し、練習を見た後に観光するタイ人なども多い

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この成功体験を基に、アジアから再び獲得したチャナティップ選手は、19年2月にコンサドーレに完全移籍する。「一番に期待しているのはピッチで活躍してもらうことだが、もう一つはタイでコンサドーレを今以上の存在に引き上げてくれる役目を担ってもらうことだ」と言う。

「ガリガリ君」で知られるアイスクリームメーカーの赤城乳業が、コンサドーレ初の「アジアプロモーションパートナー」としてチャナティップ選手をタイでのPRキャラクターに起用するなど、彼の人気を企業活動に活用する動きも出ている。「タイに進出している日本企業などから多くの問い合わせもいただいており、19年は起用がさらに増えると思う」と話す。

クラブの18年度の総収入は5年前の約3倍の30億円前後となる見通し。「北海道を元気にするためにクラブにできることを懸命に模索してきたことと、アジア戦略によってサッカーだけではアプローチできなかった企業や組織、市民らと出会えるようになり、お互いにウィンウィンとなる好循環が生まれた成果だ」と三上氏は振り返る。

「アジアサッカーの競技レベルも上がりつつある。今後も積極的に優秀な選手を取り込んでいきたい。そんな活動の中で、もしアジアの都市との姉妹提携や航空路線の新設など新たな経済交流の発展につながっていけば、われわれの仕事ももっと面白くなる」と目を輝かせた。

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■札幌市、スポーツ都市を世界にPR

タイの国王死去で海外旅行自粛ムードが高まったため、17年は伸び悩んだものの、タイ人の宿泊者数は上昇基調だ

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北海道コンサドーレ札幌のホームタウンである札幌市も、スポーツを通じたアジアとの交流に注目している。今秋には札幌でラグビーのワールドカップの試合が開催されるほか、来年の東京オリンピック・パラリンピックではサッカー競技の予選が札幌ドームで開催される。さらに2030年の冬季オリンピック・パラリンピック招致を目指しており、アジアを含めた世界の人々にスポーツを通じて札幌という都市をアピールしていく良い機会になる。

「1972年に札幌で冬季オリンピックが開かれましたが、冬季スポーツに馴染みのない東南アジアの若い人々からは札幌の知名度が低いのは否めない」と、札幌市スポーツ局スポーツ部の金谷泰亨・企画事業課長。だがチャナティップ選手のインスタグラムのフォロワーは200万人と、札幌市の人口197万人を超える人々がコンサドーレを通じて札幌に注目しており、「『チャナティップ選手と言えば札幌、札幌といえばチャナティップ選手』という認識が東南アジアで広がり、スポーツを通じたアジアとの交流が深まることに期待している」と話す。事実、札幌市によると、2017年のタイからの宿泊客は13万6,070人と、13年の8万8,495人に比べると、5年間で54%増加した。アジア向けスポーツツーリズムの可能性も広がりそうだ。

※特集「『スポーツ×アジア』の新時代」は、アジア経済を観るNNAのフリー媒体「NNAカンパサール」2019年1月号<http://www.nna.jp/nnakanpasar/>から転載しています。


関連国・地域: 日本
関連業種: 社会・事件

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