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<インドネシアビジネスセミナー>最新法務トピックスとリスク

株式会社エヌ・エヌ・エーは2018年12月21日、インドネシアの株式会社フェニックス ストラテジー インドネシア取締役の柳田茂紀氏によるセミナー「インドネシア・ビジネス・セミナー」を東京本社で開いた。19年4月の大統領選および総選挙の動向や日本企業を取り巻くビジネス環境に関する最新のトピックについて解説した。

講演した株式会社フェニックス ストラテジー インドネシア取締役の柳田茂紀氏=2018年12月21日、東京(NNA撮影)

講演した株式会社フェニックス ストラテジー インドネシア取締役の柳田茂紀氏=2018年12月21日、東京(NNA撮影)

■大統領選をにらんでの経済政策とイスラム教対策

19年4月17日、大統領選は史上初めて、総選挙と同時開催となる。

今までは総選挙で選ばれた国会議員の中から推薦された大統領と副大統領候補者で、後ほど大統領選挙が行われていた。なお、18年8月20日に候補者は確定している。

注目される大統領選挙は、ジョコ現大統領とプラボウォ氏の一騎打ちで、世論調査の数字上はジョコ氏優勢だが、選挙は水物であり、どんなに支持率が高くとも、選挙とは開けて見ないと分からないものだ。

というのも、17年のジャカルタ州知事選でのバスキ氏の例があるからである。

当初優勢であったバスキ氏だが、イスラム教団体から、イスラム教を侮辱しているということで反対運動が起き、最終的に逆転された。

ジョコ陣営はそれを勘案し、国内のイスラム教団体を統括するイスラム指導者会議(MUI)のマアルフ・アミン議長を副大統領候補に選出、イスラム教徒を動員したデモにくさびを打ち込んだ形だ。イスラム教徒の長老を副大統領候補に据えたことで、イスラム教徒からの会員制交流サイト(SNS)などを使ったネガティブキャンペーンを抑え込んでいると言えるであろう。

対抗馬であるプラボウォ氏は軍出身者。イスラム教徒の実業家が副大統領候補にし、資金力を使った集票作戦が展開されるのではないだろうか。資産は、ジョコ大統領が200万米ドル(約2億2,000万円)、プラボウォ氏が414万米ドルと開きがある。

これらを鑑みると、今回の大統領選挙での論争点はイスラム教ではなく経済政策になるだろう。

ジョコ大統領には5%台の経済成長を維持し、インフレを3.5%台に抑えてきた自信がある。人間開発指数(HDI・人間的な生活の度合い)は14年の68.9から4年目の18年は69.4に改善。貧富の差を測るジニ係数(0~1で表し、数値が大きいほど格差が大きい)は14年の0.414から今年は0.389に縮小した。貧困層は15年に2,859万人だったのが17年には2,777万人と、着々と成果を上げていると大統領自身が述べている。

一方で、プラボウォ氏は、ジョコ大統領の経済的な政策を批判している。債務膨張やルピア安、貿易赤字に加え、貧富の差は実際埋まっておらず貧困層の不満が蓄積していることによる政権交代キャンペーンが18年5月6日に実施された。

ただ、プラボウォ氏は思い付きで発言することも少なくなく、それで揚げ足を取られている。

いずれにしても、中・下層とエリート層の対立をいかにうまくまとめるかが次期大統領に選ばれるための最大のポイントとなる。

■最終年度に入ったジョコ政権の評価

18年10月20日で残り1年の任期となったジョコ政権。207議席(37%)の少数与党でスタートしたが、15年末に386議席(69%)の安定政権を達成。

経済面では、石油燃料補助金を廃止し、財政をインフラ予算に多く回したことにより、港湾や道路が整備され、地方はインフラ整備の恩恵にあずかっている。しかし、インフラ整備の進捗(しんちょく)はみられたが、15~19年のインフラ支出は前5年に比べて2倍に膨らんだ。

ジョコ大統領は、水平(地域間)と垂直(貧富)の格差解消に躍起になっている。これらには多額の資金が必要であり財源が不足するため徴税を強化するしかない状況で、財政赤字は18年11月時点で、対国内総生産(GDP)比1.95%と改善している。

■外資ネガティブリスト改正見直し

前回、16年に実施された外資ネガティブ・リストの見直しが、通常3年に1回のペースのところ、ジョコ大統領としては外国投資を呼び込み雇用を増やしたいという思惑から、時期的に早い18年11月に行われた。ただし、プラボウォ氏側が原案に反対し、正式発表が遅れている。

インターネットビジネス関係は外資に100%開放される予定。19年初めには正式発表されるため、業種から関連カテゴリーが削られていないか、また外資が何%まで認められているかを注目しておくことが重要だ。

■投資手続き改正

当国投資許認可システムの革命とも言われている、18年で一番の話題となった事業許認可統合電子サービス(OSS)の注意点は、従来、会社設立時、最初に投資調整庁(BKPM)の許可を得た後に会社設立証書を作成し、法務人権省の承認をもらうという流れであったが、現在は法務人権省の承認が先で、その後OSSに登録すると自動的に許可が下りる点であり、今までとはスピード感がまるで違う。

■通関後検査

輸入検査対象品目をあらかじめ登録しておくことにより、税関検査なく輸入でき、検査は通関後となる。対象品目は日本貿易振興機構(ジェトロ)のホームページよりHSコードで検索可能。手続きはINA TRADEサイトを経由し、輸入申告書(PIB)と共に、輸入条件を満たしている旨の自己申告書を提出。

前記提出者は貨物到着次第、保税地域から貨物搬出が可能。税関の事後検査のために輸入許可と船積み検査報告書を5年以上保管。申告義務違反が発覚すると2年間PIB申請不可となり輸入ができなくなるのでご注意いただきたい。

■新外国人雇用

18年6月29日に施行された大統領令では、外国人雇用許可(IMTA)が廃止され、外国人雇用計画(RPTKA)に統合される予定であったが、各方面からの反発を受け、RPTKAと外国人雇用通知(NPTKA)の二段階となった。

就労条件や加入保険の義務の変更のほか、就労ビザの発行場所が東京のみとなったことや、役員も雇用契約書が必要になったことも要注意である。

突発事項に対する大きな改善点は、緊急時のRPTKA。到着ビザで入国後2日以内に申請、1営業日内に承認書発行できることだ。ただし、週末の入国は申請できないので、週の前半に入国することを心に留めておきたい。これにより緊急時の空港での短期滞在許可(ITAS)の取得は不要となる。

■ビジネスリスク

ビジネス上の一番の問題は個人消費の悪化である。高所得者層は税務調査を恐れて買い控え、中所得者層は旅行やレジャーへと支出がシフトしライフ・スタイルが変化。低所得者層は可処分所得額の減少により日用品が買えずと、悪化には三者三様の理由がある。18年はアジア競技大会があったにもかかわらず、第3四半期(7~9月)の小売指数の増加率は年率4.2%となり、第2四半期の4.9%から鈍化した。

ビジネスを取り巻く諸問題に、頻繁に行われる法改正がある。法には運用上の問題点もあり、数も非常に多く、いつ施行されてどのように改正があったのかが把握できない。

汚職も相変わらず多く、17年の汚職件数は514件、18年は1月から9月の9カ月間で既に509件に上った。汚職事件が次々に摘発されている背景には、権益分配が期待できるプラボウォ氏支持にまわる旧守派に対するけん制と読み取ることもできる。

インドネシアは法制度が機能していない国であること、他の東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国とは比較できない特殊性を持っていること、小売業が華僑の牙城であり外資が参入できないこと、これら多くのビジネスリスクを熟知した上で、常に相手の軒先を借りて商売しているという意識を持っていなければならない。


関連国・地域: インドネシア
関連業種: マクロ・統計・その他経済雇用・労務政治

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