労働雇用規制の改悪ない、日本人商工会会頭

フィリピン日本人商工会議所(JCCIPI)は16日、2018年度会員総会をマニラ首都圏マカティ市内のホテルで開催した。官民を挙げて事業環境の改善をフィリピン政府に働きかけていくことなどを盛り込んだ事業計画が承認された。多胡直人会頭(丸紅フィリピン社長)は、「労働の契約化」禁止をめぐる規制強化について、「(当面は)これ以上、改悪も改善もしない」との見通しを示した。

今年度の事業計画は、17年度に引き続き、◇ビジネス環境の整備◇開かれた商工会議所◇積極的な情報発信――の3本柱から成る。

多胡会頭はNNAに対し、ビジネス環境の整備で直面している問題は、◇「労働の契約化」禁止をめぐる規制強化◇税制改革法(TRAIN)の第2弾法案でのフィリピン経済区庁(PEZA)登録企業への優遇規定の改正――の2点と説明した。労働関連の規制については、先に発布された大統領令(EO)第51号でも、非中核業務の外注や、ジャニター(清掃員)、守衛などプロジェクト単位の雇用、季節雇用が認められていると指摘。ベリヨ労働雇用相も「労使双方が不満を持つ現状は正常」との立場を示していることから、どちらか一方の不満がさらに高まるような規制改正が当面はないとの見方を示した。

PEZA企業への優遇改正については、◇既存企業に対する優遇消失に15年の猶予を与えること◇PEZA企業へのモノとサービスの供給(間接輸出)に対する付加価値税(VAT)の税率をゼロにする措置の廃止では、還付制度を徹底すること◇PEZA企業に国税と地方税を直接支払わせる案に対しては、地方税の税率が不明瞭なことなどから見直し――を政府に訴えている。今後も、日本大使館、日本貿易振興機構(ジェトロ)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)、外国商工会議所連合(JFC)、地元商工会議所などと連携して投資環境の改善を働きかける方針を示した。

総会では今年度の事業計画と予算のほか、JFCとの連携や政府との交渉役として活躍する藤井伸夫副会頭を引き続き専務理事に任命することも、賛成多数で承認された。

■優遇撤廃なら、成長に陰りも

総会後は、野村総合研究所・グローバル製造業コンサルティング部の上級コンサルタント、岩垂好彦(いわだれ・よしひこ)氏が、「フィリピンを取り巻く環境変化と中長期的展望」と題して講演した。同氏はフィリピンの中長期的な成長ポテンシャルは高いものの、税制改革で企業への優遇が廃止・改悪されれば、投資が停滞し、成長に陰りが出る恐れがあると警鐘を鳴らす。

JCCIPIの総会と講演会には270人が参加した=16日、首都圏マカティ市(NNA撮影)

JCCIPIの総会と講演会には270人が参加した=16日、首都圏マカティ市(NNA撮影)

岩垂氏は、従属年齢人口(幼年人口と老年人口)に比べ生産年齢人口が2倍以上になり経済成長力が高まる「人口ボーナス期」を迎える前に高成長を実現していること、賃金水準が他国に比べ安定していることなどを挙げ、フィリピンが東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で、中長期の成長ポテンシャルが最も高いと評価した。

一方で、道路ネットワークや工業団地、エンジニアなどの人材育成といった産業インフラの遅れから製造業の集積が進んでいないこと、脆弱な国家財政を課題に挙げた。

同氏は、経済のデジタル化が新興国の製造業にも及び、ものづくりと雇用がこれまでと違う発展方向に向かいつつあると指摘。地方都市でもIT・ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業が盛んなフィリピンは、製造業のデジタル化で人材を活用できる可能性が高いとの見解を示した。

中長期的なフィリピンのポテンシャルを生かすには、日本とフィリピンの官民が5~10年の中長期的な視点で、それぞれどこに投資をするかを共有し、実行していく必要があると提言。民間投資を呼び込むための優遇措置について、財政不足を補うための廃止・改悪という悪手を打たないよう、官民で乗り越えていく必要があると強調した。


関連国・地域: フィリピン
関連業種: 経済一般・統計社会・事件

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