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【アジアで会う】久田信良さん 航空大学運営 第146回 教育支援は自身の一部(フィリピン)

ひさだ・のぶよし 1961年、長野県生まれ。昭和音楽大学の前身の専門学校でジャズ・ポピュラー音楽を学ぶ。父の急逝後、家業の建設会社を継ぐが、後にバブル崩壊のあおりを受け解散。その後、当時趣味で習得していた航空機操縦技術などを生かして社会貢献をすべく、フィリピンに渡り現在のFDSA航空科学技術大学を創設。趣味はジャズ音楽。ドラムも演奏する。

「みんな空を飛びたいでしょう。鳥みたいに地上を見下ろして」。朗らかなしゃべり口でそう言いながら、コックピットで操縦かんを握る自身の写真を見せてくれた。子どもの頃の夢はパイロットになることだった。体調を崩した関係で現在は操縦はしていない。学生時代は音楽を学び、仕事は建設事業、空いた時間を利用して操縦スキルや航空工学の専門知識などを習得した。よく読む本のジャンルは歴史。器用で興味の幅が広い久田さんが、ここ30年間最も注力してきたのは、教育による社会貢献だ。

カビテDTS専門校のスタッフと久田信良さん(左から2番目)

カビテDTS専門校のスタッフと久田信良さん(左から2番目)

■フィリピンで初の日系大学を創立

誰かのために、社会のために行動したいという思いは古くからあり、18歳の時にはアルバイトで稼いだ小遣いを孤児院に寄付していた。フィリピン旅行でマニラのスラム街、スモーキーマウンテンの悲惨さを見た時、貧困から子どもたちを救おうと誓う。

航空技術を生かしながら貧困家庭の子どもを救いたい。そう思い1987年に始めた安価なパイロット養成学校には、比較的裕福な生徒や外国人が多く集まった。これでは学校をつくった意味がない。当初の目標をかなえるため針路を修正、航空機整備など航空関連技術などを教える航空技術学校として再出発させた。後に大学として認定され、現在はクラーク大学本校、カビテDTS専門校、セブ・マクタン国際空港校をパートナーと運営している。

久田さんは「カビテDTS専門校が一番ポリシーに近い」と話す。技術教育技能開発庁(TESDA)と連携し、デュアル・トレーニング・システム(DTS)に沿った授業を提供する。DTSでは、学校での座学に加え、生徒は学校と提携している企業で働きながら専門技術を身に付ける。企業からの手当で授業料を工面し、技術保持の証明であるDTS修了証の取得を目指す。カビテDTS専門校では、貧困のために大学進学を諦めた人が、技術を習得すべく入学する場合が多いという。

久田さんは、営利目的ではないので、学校の収支面は厳しいと明かす。それでも「心が折れそうになったことはない」。教育支援は達成すべき目標というより久田さん自身の一部だ。

■日比関係に期待すること

DTS提携企業には日系もあり、似た信念の人にも出会えた。しかし、もっと多くの企業に社会的役割を果たしてほしいと期待する。「工場進出で十分と言えるのか」と久田さんは問う。

戦後、大手日系航空会社の立ち上げをフィリピン航空が支援したという逸話も、フィリピンで久田さんが社会貢献をする理由になった。日比の歴史的結びつきは興味深い。地方に行くと、旧日本軍の侵略を非難する声ばかりではなく、懐かしむ声や擁護の声も多くあり、日本人としてうれしかったという。フィリピンに残される旧日本空軍の機体や遺骨の収集など、教育支援以外の活動でも人に役立つ方法を探している。

■もしも政治家だったら

もし久田さんがフィリピンの大統領だったら、最初に取り組むのはやはり教育改革だ。具体的には、まず教員の給料を上げるという。

フィリピンでは、多くの教師が給料の不足を埋めるために副職を持っている。家庭教師をして稼ぎ、場合によっては、高所得層の生徒の親からお金を受け取り、成績に反映させることもある。教育に注力できない環境の改善には、教員の給与を上げることが近道だ。十分な給料を支払うことで、初めて教育に集中できる。

久田さんは、「ドゥテルテ政権もこの問題の大きさに気付いていて、警察など公務員の給料を上げている」と指摘する。汚職は人そのものの問題というよりも、環境が作り出すのかもしれない。

「三流は金を残し、二流は仕事を残し、一流は人を残す」が座右の銘と語る久田さん。人の可能性を信じて、今後も教育者として学校の拡大に尽力する。(フィリピン版編集・岡田真沙恵)


関連国・地域: フィリピン
関連業種: 社会・事件

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