2005年10月26日
会社の将来の描き方
生産がどんどん小さくなっていきます。今ある設備でこれからの会社をどうしていったらいいのでしょうか。
マレーシアに日系各社が競って進出した時期を考えると、当時はマレーシアの人件費も安く、インフラも他の国々と比較すると進んでおり、魅力的な国であったはずです。ところが現在は、中国という強力な競争相手国があるほか、タイなどの近隣諸国が進出先として魅力があり、マレーシアに進出した各社は縮小、撤退を余儀なくされているのが現状のようです。
<マレーシアで製造するメリットは>
マレーシアで製造するメリットがあれば、各社もラインを増強し、人手を増やし、生産に追われることになります。
ご存知の通り、製造業に要求されることは「良い品質の製品」を、「安い価格で」、「納期どおりに納める」ことです。
原価としては:材料費、人件費、設備償却費、その他の管理費などがあります。この中でマレーシアが他国と比較し有利なものが何かあるでしょうか。
<国際競争に勝つには>
人件費などの過去に有利であった海外進出の要因も、毎年行なわれた2ケタ近い賃上げで、すでに競争力を失っています。
一方で、賃金上昇に見合うだけの能力が毎年現地スタッフについてきたかというとそうでもありません。毎年2ケタの能力向上が図られたかというとそうは言えません。
他国と比べ有利ではないと思われるマレーシアですが、何とかしたいと思うのは、マレーシアにいる我々すべての願いではないでしょうか。
国際競争に勝つためには、他国より良い品質の製品を、他国より安いコストで、他国より正確な納期で、納めることです。
このためには何をしなければならないのでしょうか。
私のマレーシアでのコンサルタントとしての経験から考えて見ます。
他国より良い品質の製品を造る:
より良い生産設備、検査機器を入れることは十分に考えられます。しかし、一方で、これらの機器は非常に高額であるということも事実です。品質が向上しても、コストがそれ以上に上昇してしまうと、販売は伸びても利益が出ないということになります。また、高度の機械を扱うことができる人は限られていることもあります。
このような状況下で品質を向上させる方法の一つはISO 9001のような品質管理のシステムを導入することでしょう。しかし、これだけでは望むようなレベルまでの品質向上は期待できません。期待する高いレベルの品質を維持するのにはやはり、日本的経営手法であるTQCの考え方の導入であろうと思います。つまり、全員が品質意識を持って仕事をするということです。私は、これは可能であると考えています。可能にならない理由はいくつかあります。
(1) トップ・マネジメントが全員の協力を求めることを考えていない
(2) 中間管理職が品質に関する情報をスタッフに伝えていない(面倒くさい、スタッフにわかるはずがない、スタッフは作業だけしていればよい)
(3) 品質はQCの仕事と考えている
(4) 「私は作業者だから、言われたことだけをしていればよい」
しかし、実際には作業者も結構協力的で、指示さえ適確に出せば、品質に関する管理も自分の仕事として取組んでくれます。ただし、指示の出しっぱなしではなく、フォローアップが必要です。これが、多くのマネジャー、スーパーバイザーでできていません。いいかげんです。自分のことしか考えていないとも言えます。
QCCなども含めて、全社員に品質意識を持たせ、品質管理を全員で行う方法は色々あります。実行するのには、トップ・メネジメントの理解と忍耐が必要で、非常に時間が掛かるものです。品質の向上はビジネス環境の悪化との競争のように思われます。どれだけ急いで品質を向上させるかがカギです。
他国より製造原価を抑える:
歩留まりの向上(不良率の向上を含む)、機械稼動率の向上、機械故障の低減、購入単価の低減など、製造原価低減の方法は色々あります。
品質向上と同じで、取り組み方は簡単でも、じっくりと継続して取り組むことが成果を出すこつです。じっくり取り組むためには、それなりのシステムや継続的に叱咤激励をすることが必要です。品質の管理でも同様ですが、マレーシアでは上司が部下を管理、指導するのが最も苦手です。日本人が現地マネジャー、スーパーバイザーを指導激励する必要があります。
納期どおりに製品を納める:
生産管理をしっかりとすれば良いケースが多いのですが、生産管理の担当者が生産管理を知らないことが多く、自社の生産管理の実力を知っておく必要があります。
多く見られる例は、製造で問題が起き、生産が間に合わなくなった。製造が2日遅れたから、出荷も2日遅れるというケースです。
以下のことが必要です。
(1) 生産が遅れても出荷の日程は守る
(2) 生産遅れなどの兆候を早くつかみ、問題が生じる前に対策を実施する。
<まとめ>
簡単に言うと、TQC、TPMなどの日本的経営手法を会社全体に導入することによって、品質向上、原価低減、納期厳守を行うことができます。
その際、カギとなるのはマネジャー、スーパーバイザーなどの中間管理職であり、これらのスタッフをOJTで教育する必要があります。
実施に際してはトップ・マネジメントの理解が必要です。
活動は根気良く、継続的に行なわなければなりません。
全員の努力と改善がどこまでできるか、その改善で人件費の安い中国などとどこまで競争していけるかです。マレーシアには、このような努力の積み重ねで、成功している企業もあります。
<マレーシアの良い点はなにか>
海外はどこの国でも同じですが現地スタッフの指導が難しいものです。私に懇切丁寧に説明をさせて、揚げ句の果てに分かったけどやらないと言う人もいました。
マレー人には日本人から言われたことをやってみるという姿勢がある点は高く評価したいところです。また、グループ活動ができる点も高く評価できます。このようなことから、日本的経営の基礎ともなっている、グループ活動や経験から学ぶことが可能であり、改善の余地があると見てよいと思います。