2004年12月22日

第19回不正発行増値税インボイス


順風満帆のA社に突然、税務局がやってきた。免税期間中なので企業所得税は問題無いはずと高をくくっていたら、調査対象は増値税。増値税インボイスの一部に偽モノが見つかったと言うのだ。

A社は設立されてから3年目の製造業。創業2年目から順調に黒字転換し昨年から2免3減を適用し今年は免税の2年目である。総経理のB氏は、『うちは創業2年目から黒字化しているので移転価格の問題はないですよ。もし企業所得税で多少更正をうけても所詮免税期間中。全く問題ないですよね。』とのコメント。

しかし、免税期間中であるにもかかわらず税務局はやってきた。税務局に調査されたのは企業所得税ではなく、増値税。ここで増値税インボイスの一部に偽モノがあるとの指摘を受けた。そういえば設立当初に原材料をC貿易公司を通じて購入していたが、今は近くに良いサプライヤーがみつかり取引をしていない。

C社から仕入れた原材料の増値税額は累計で数十万元以上もある。仕入控除や輸出還付に使っていたインボイスがいきなり否認され、慌ててC社に問い合わせをしたところ、C社は移転しており連絡が取れない。一体どうなってしまうのか…?

会社が受け取った不正発行によるインボイスに対して、税務局はまずその取得が“善意”であったか否かについて判定します。

その取得が“善意”であったと認定された場合には、取得者側に対して脱税、または輸出増値税還付に関して詐欺としては扱われません。しかし、仕入項目増値税として控除してはならず、また輸出増値税の還付はできません。もし既に仕入控除や増値税還付を行ってしまっている場合は、それらを追徴して支払うこととなります。

もし、その取得が“善意”でなかったと認定され、仕入側が仕入増値税を控除する前または輸出増値税還付を取得する前にも承知しているという証拠がある場合には、税務機関は仕入側から税金を追徴し、かつ脱税金額、詐欺金額に対して5倍以下の罰金が科されます(国税発[1997]134号及び国税発[2000]187号規定)。

また、その不正発行によるインボイスを取得したために追徴された増値税額は、企業所得税を算出する前に費用として計上することはできません。つまり、増値税を追加納付するだけでなく、企業所得税も課税されます。(国税函[2003]112号)

従って、万が一不正発行増値税専用インボイスを受け取ってしまった場合には、まずは社内調査を行い、当該インボイスを取得した当時の状況を調べることが大切です。インボイス金額が比較的大きい場合に税務局から“善意”であると認定してもらうためには十分な証明を提供しなければなりません。少なくとも、貨物の流れが真実であるということや、代金決済がなされていることを示すために、入庫伝票や支払伝票等の証明書類が必要です。

『統一発票をください。』中国に来て、まず覚える言葉のひとつ。その入手が税務処理の絶対要件となることは、多くの人が認識しています。ただ、その統一発票が本モノであるか偽モノであるかを見分けるのは、偽札を見分けることよりも難しく、偽造防止税務管理システムが導入されて以降偽モノは少なくなっているものの、過去に取得したインボイスに関しては、落とし穴となりがちです。税務調査を受ける前に、インボイスの事前チェックをしておきましょう。

※(本稿は著者個人の意見であり、所属する法人とは関係ありません)


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