2004年4月7日

第1回個人所得税乗るべきか見送るべきか


2004年は税金の年。増値税還付率引き下げから始まって、開発区過剰優遇政策付与の検査と整理、さらには今回紹介する個人所得税の特赦通達である。したたかな税務当局の『あめとむち』に対して日系企業はいかに対応するべきなのか。

文末の、四角で囲んだ文章は、国家税務総局が2004年3月5日に発布した27号通達からの抜粋である。

個人所得税の徴税漏れ強化というなら、中資企業の中国籍人員も含めるべきではないかと思うが、外国籍人員の修正申告には特赦を与える(逆にいえば中国籍人員の修正は原則通り)ということで内外不差別の議論をかわしているところがしたたかな通達である。

さて、上海近郊のある地区に進出した会社では、税務登記・申告の方法に際して税務局に相談しに行き、納税標準について口頭指導を受けたことがあるという。総経理クラス何万元、副総経理クラス何万元というような給与標準に従って納税計算することがいわばその地区の慣例になっており、これが一方では税務当局の徴税コストを下げ、他方では製造(税金)コストの低減にもつながるという双方の利害の一致するところであったわけだ。

古くから中国に進出している企業や、最近では新興開発区に出た企業などにみられるこの状況を是正するものとして、いよいよ中央当局が本腰を入れ始めるのかということに注目が集まる。ほぼ同時に出された開発区の優遇管理の検査・整理にもつながるのであるが、過剰優遇の授与など地方レベルの独自判断に歯止めをかけたい中央政府としてはまず各管轄の地方レベル税務局に猶予を与え、その後に彼らに対する取締まりを強化するのではないだろうか。

つまりこの通達は企業に向けて出された形式をとりながらも同時に、地方レベルの税務当局への警告とも見てとれる。通常なら中央通達が出されてのち、すぐに地方レベルで焼きなおした通達が発布されるのだが、これが遅れているのも地方レベルの当局としてキャンペーンをはって取り締まりを強化するか否かの判断を見合わせているように思える。

今回特に修正申告を検討すべきは、給与の一部(例えば留守宅手当)や賞与を過去未申告であった法人だ。意図せざる原因により過少納付となった理由は必要となるものの、遡及計算に一定の歯止めを掛け、罰金と滞納金の減免を図ることができるだろう。

前任者からの引継ぎで、税務リスクを相当感じながらも動きが取れなかった総経理・経理責任者には朗報である。昨年来目立たないように段階的な修正をかけてきた企業もみられるが、ここで一気に修正してしまうのも一案だ。逆に来年になると、中央当局から目をつけられた地方では、中央主導による税務調査が一斉に始まるリスクがある。コスト低減の目的以上にリスクのある所得の申告漏れはこの際きれいにしておくに越したことはない。

■四条 徴収管理の強化および的確なる未払税額の整理

各地の税務機関は2004年年末までに、納税者が自ら検査し自ら正すことを主たる内容とする未払税額の整理作業を行わなければならない。具体的な要求は以下の通りである。

(一) 2004年6月末までに、外国籍人員あるいは源泉徴収義務者が自ら過年度の未払税額を申告する場合、法により税額を追加納付するほか、1日当たり未払税額の0.05%の延滞金を追加徴収する。ただし、処罰はしない。

(二) 上述の期限までに、外国籍人員が自ら未払税額の追加納付をしない場合、長期にわたって課税所得額を隠匿、虚偽申告或は申告していない状況があれば、「中華人民共和国税収徴収管理法」の規定に基づいて税額を追加徴収し、かつ延滞金を徴収し、罰金に処する。

※本文は著者個人の意見であり、所属する法人とは関係ありません


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