2003/06/24

第76回 恵州大金三石空調<ダイキン>、快適な生活を支える、縁の下の力持ち



ハイグレードな空調メーカーとして、中国にもすっかり浸透した感のある「ダイキン」ブランド。多くのメーカーが参入し、混乱の続く中国の空調市場においても、同社の製品はその品質とサービスを武器に安定した人気を誇っている。恵州大金三石空調は、世界各地にネットワークを持つダイキングループの中でも、セントラル空調などに使用される水冷式、空冷式のチラーを生産している企業だ。

松枝総経理
同社は1997年3月、広東省恵州市に恵州の三石集団との合弁で設立。その後11月に工場が完成し、98年1月から操業を開始。2000年4月には、ISО9002認証を取得している。

チラーとは、温度調節された水を、室内に設置した空調機器に配管を使い循環させることで室温を一定に保つ働きをする、セントラル空調システムの冷温水を作る設備のこと。セントラル空調システムの中でも心臓部となる個所の一つだ。同社の操業当時、すでにダイキンブランドのエアコン設備は中国に輸入され、非常に高い評価を得ていた。しかし同社の松枝司総経理によると、当初の売れ行きは芳しくなかったという。チラーを扱う販売店の中に、製品を安く販売し、工事費用で利益を得ようとする動きがあったうえ、当時は輸入品信仰が強く「国内で生産された製品は質が悪い」という考えが根強く残っていたためだ。

同社はこれに対応するため、拡販のほか販売価格チェック、製品のPRを開始。00年からは広州に営業本部が設立されたことに伴い、本格的な販売活動をスタートさせた。また中国市場のニーズに答え、製品の仕様や外観の変更なども行ったという。こういった対応や日系企業ならではの綿密なアフターサービス、また輸入品と寸分違わぬ品質などが評判を呼び、昨年度には売り上げが17億円に達するまでになった。同社のチラーに使用する部品材料のうち、70%は輸入。ほか構造用材料は現地で調達する体制となっている。ほとんどの部品は自社内で溶接、板金加工、機械加工などを行っている。加工後表面処理が行われたのち、凝縮器、冷却器などなどに組み込まれ、圧力検査、塗装、製品組立て、運転検査などの工程を経てチラーは完成する。生産設備にはメンテナンス、部品交換などをスピーディに行うため、すべて中国製の設備を採用。現在は水冷式チラーで月産100台を生産しており、5月から本格的に始まった空冷式チラーの生産も、来月には同じく月産100台まで拡大する予定だ。製品のうち5~10%程度は香港、タイ、トルコ、南アフリカなどにも輸出されている。「基本的にアフターサービスが完ぺきに行える地域にしか輸出していません」と松枝総経理。国内では華南地区のほか、内陸、華東、華北などでの需要も多いという。

■優秀な人材の定着

工場風景
チラーの組み立てには溶接、配線、板金加工などに熟練した人材が必要だ。熟練工員のジョブホップが問題となることも多い中国だが、同社では全体の約70%が創業当時からの工員。多くが黒竜江省など遠隔地からの出稼ぎだが、退職率は年間3~4%程度に収まっているという。工員の意見を現場に反映させる提案制度の実施や、また条件をクリアした優秀な工員には恵州の戸籍を取得できるようとりはからうなど、各種制度の整備も人気を呼んでいるようだ。「優秀な人材に定着してもらい、仕事を覚えてもらえればもう生産指導は必要ない。現在生産部門に日本人はいません」と松枝総経理は述べている。

操業から約5年、今年は新たに生産を開始した空冷式チラーを武器に、年間売り上げ額30億円を目指す。「中国の市場は巨大だが、まだ当社のシェアは高くない。今後は生産力、販売力の増強にさらに力を入れていきたい」と松枝総経理。更に来年を目指し現在生産している大型チラーのほか、小型チラーや其の他のセントラル空調機器を生産する新生産会社を上海に設立準備中だという。

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