2003/02/25
第61回 三洋半導体(蛇口)<三洋電機>、中国・半導体生産の先駆者
半導体を使った製品が暮らしに溶け込むようになってから久しい。現在では携帯電話からオーディオ・ビジュアル機器、パソコン、その他各種家電製品から自動車搭載機器まで、現代の暮らしを支える製品の多くに半導体が使用されている。その半導体を生産・販売している企業の中でも、その精度と品質で高い評価を受けているのが三洋製の半導体だ。
三洋のセミコンダクター・カンパニーとして、中国での半導体事業の要となっているのが三洋半導体(蛇口)有限公司。中国における半導体の生産に、最も早く踏み切った企業の一つでもある。 同社が三洋100%出資の半導体製造企業として、広東省深センの蛇口工業区に設立されたのは1984年の11月。当初はリードタイプと呼ばれる、足付きの大型半導体を中心に生産していた。当時はココムの制約などもあり、多くの企業が東南アジアに目を向けていたが、同社はあくまでも「中国の発展のために尽力する」という姿勢を崩さずにいたという。しかしその後90年代から、半導体産業が次々とに中国に集中し始めることになる。 「すごい先見の明があったのではないか、なんて言う人もいますね(笑)」と語るのはベテラン技術者でもある同社の安藤守総経理。同社はその後、半導体産業の発展とともに業績を順調に伸ばし、2001年度の売上高は約45億円に達している。 現在はウエハーを日本から輸入、携帯機器や家電のDCコンバーターなどに使用される面実装と呼ばれる超小型の半導体をメーンに、月あたり6,000万個を生産している。昨今の携帯電話やデジカメの急速な普及にあわせ、製品の85%は日本向けに輸出されているという。安藤総経理は「そのうち現地での需要も高まってくるでしょうね」と語る。
生産を支える技術 半導体の生産は、文字通りの「ハイテク産業」である。製品に対しては常に小型化と高密度化が求められる。同社の製品開発のコンセプトにはもちろん「より薄く、より小さく」といった目標が掲げられている。このコンセプトを実現するために、同社は最新鋭の半導体の組み立て設備を導入。従来は数台で1ラインを形成していた一連の作業を最小限まで簡略化したほか、フレーム生産性を数倍アップすることにも成功。また独自に「Mループ」と呼ばれるチップと金線の新たな接続方法も開発し、さらなる高密度化を実現した。 1995年にはISО9002を、97年にはISО14001を取得。99年には深セン税関よりAランクの加工貿易企業として認定されたほか、昨年には同市のハイテク技術企業としても正式に認定されている。同社では他に、設備に少しでも改良の余地があればすぐに改善できるよう体制を整えている。たとえば半導体のプレス機の一部パーツが摩耗しやすくなっていたとしたら、摩耗しにくい形状を考案し導入する、といった具合だ。「少しでも現状をよりよく変えていこうとする意欲を持つことが大事」と安藤総経理は語る。 ■ベースは1人1人の技術力 どれだけ最新技術を導入しようとも「それを支えるのはやはり従業員の技術力です」と安藤総経理。「人間の健康診断のようなもので、常にメンテナンスしていれば機械は壊れない」という考えに基づき、同社では設備の点検を欠かさず行っているが、それには専門知識を持った人材が多数必要とされる。結局は1人あたりの技術力にかかってくる、というわけだ。同社はセミナーの開催や評価体制の改定を通じて、さらなる技術および意識の向上、そして業績の上昇を図る。今後は3年以内に生産数を月産1億個まで引き上げる予定という。 。 |