2003/02/11

第59回 飯山電機(丹東)<イーヤマ>、国境最前線と日本を結ぶ



朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国境に位置する遼寧省丹東市。中国最大の辺境都市で、北朝鮮との重要な貿易窓口であり、近年はこうした背景を利用して国際的な物流拠点を目指している。ここにいち早く進出した日系企業が、長野県に本拠を置くパソコンメーカーのイーヤマ。飯山電機(丹東)はその100%出資企業で、主に欧米向けのディスプレーを生産している。

 工場風景

飯山電機(丹東)は1999年4月に、イーヤマの子会社、アコットの100%出資で設立された。主に19インチのCRTカラーディスプレーを生産、昨年の生産台数は12万台で、約90%を欧米に、10%を日本に輸出している。

イーヤマは1993年に丹東飯山顕示器有限公司を合弁設立しており、ここではディスプレーのほか、NTSC方式の日本向けカラーテレビを生産。丹東にはほかにも、イーヤマの関連会社であるプラスチック成型やハーネスのメーカーなど3社が出ており、ほかに目立った外資企業がないこともあって、同社の存在感は極めて大きい。

イーヤマが中国進出を決めた動機は多くの日系製造業と同じく、コストを下げて価格競争に対応するためだった。候補地としてはほかにも大連、深センがあったが、既に日本の大手メーカーが出ており、存在感が薄れる恐れがあった。そこで白羽の矢が立ったのが、合弁相手となるテレビメーカーがあり、日本にも近い丹東。もちろん「将来北朝鮮の市場が開放されれば」という思惑も少しはあったようだ。

中国進出第二弾として設立された同社は、2000年には35万台を生産し、4億元近い売上高を上げるなど大きく業績を伸ばしたが、その後17インチの生産を止めたことやLCD台頭などの影響で、ここ2年は生産・販売ともに横ばい。このため最近は自社製品だけでなく、他社製品の委託加工にも力を入れている。

同社の強みは何と言っても自社傭船を持っていること。150コンテナ積載可能の船を使い、中国側との合弁で丹東と新潟県直江津を結ぶ航路を運営している。95年に不定期便としてスタートし、現在は丹東~大連~山東(威海・青島)~敦賀~直江津を結ぶ便を週1回運航。このため通関もスムーズで、注文に対しスピーディーに対応することができる。

中国での販売にも着手する計画で、昨年上海にイーヤマの販売会社が設立されている。医療機関や研究所など特殊用途向けの市場を開拓していく考えだ。

■豊富な資源と安定した労働力

芳野順三総経理

辺境にあると思われがちな丹東だが、大連から車で約4時間、瀋陽からは約3時間と意外に近い。インフラ面では大河・鴨緑江が流れているだけあって水資源は豊富で、これを生かした電力も十分供給されている。

労働者の平均賃金は月500元ほど。東北地方の国有企業はどこも改革の真っ最中で、レイオフ従業員を抱えている。丹東市も例外でなく、就職事情は厳しい。このため逆に高いレベルの従業員が集まり、安定した雇用が望めるという。

現在同市に駐在している日本人は10人ほど。場所柄、韓国企業の進出が目立つが、市政府はイーヤマの進出を見て「大型の投資が期待できる」と日本企業の誘致に力を入れている。

イーヤマ最初の進出以来2回目の赴任で、丹東を知り尽くしている同社の芳野順三総経理は、「日本に近い立地条件やまだまだ安い加工コストを売りに、日本企業や中国企業のお手伝いをしていきたい」と力強く語る。

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