2001年10月15日

第48回 広州五十鈴客車<いすゞ自動車>、サプライヤーをかける「ふるい」に自信



広州で高級大型バスの生産を手がける広州五十鈴客車。生産を開始した昨年は価格競争力などからなかなか市場に食い込めなかったが、国産化率の引き上げと品質の維持の両立に力を注ぎ、先行する外資系メーカーを猛スピードで追い上げている。その「日本品質」へのこだわりをどのように維持しているのか。

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国産化率は引き上げたい、だが品質を落とすわけにはいかない――中国に進出するメーカーなら誰もが思いを巡らせる問題。

広州五十鈴では部品サプライヤーに日本でいすゞが使用しているものと同じ部品図面、品質基準要求を提示する。

これにより日本での生産と同水準の供給力があるサプライヤーを選抜。部品の品質チェックは広州でも行うが、現地で評価できない部品については、技術提携先でもある日本のいすゞに送りテスト、評価してもらう。
中方からは「もっと国産部品を使ってコストを引き下げてくれ」と突き上げられることもあるそうだが、「価格よりも品質優先」の姿勢は崩さない。

広州五十鈴で技術部門を総括する小玉三千春副総経理は「広州五十鈴に納入するサプライヤーは、それだけで優良品質の認定を受けたようなもの」と胸を張る。同社の国産化率は、タイヤやガラス、ライト、シートなどの部品を中心に現時点で43%。近日中には58%に引き上げることも決まっている。

■中国市場唯一のエアバック

同社の中心モデルであるGALAハイデッカー(全長12メートル)の販売価格は約198万元。

中国の高級大型バス市場でトップシェアを誇るボルボの同車種と比べると20万元ほど高い設定だが、一般のフレーム構造よりもねじれ強度や衝突時の安全性が高いモノコック構造(応力外皮構造)を中国に持ち込んでいるのは広州五十鈴とネオプラン(独)だけ。

また中国でエアバック仕様を設定しているのは広州五十鈴のみと、高い安全性と品質は他社に負けないセールスポイントだ。

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ところで、中国で造るバスと日本車ではどのような仕様の違いがあるのか。ハンドルの左右は別として、大きなポイントは車体の中間部に2つ目のドアを設けること。

また必ずトイレを設置するのも、高速道路の長距離移動で使われることの多い中国市場の特徴といえる。

もっとも高級バスは顧客のリクエストに合わせて1台1台仕様を変えていくことが必要。だからこそラインのロボット化が難しく、作業員の熟練が重要となる。広州五十鈴では昨年、生産台数が少なく作業員の習熟が思うように進まなかった。

当初は日本の工場への研修も実施してきたが、最近では生産台数も増え、製造を通じての熟練度引き上げも可能となってきた。

■高速ユーザーが中心

日本で高級バスと言えば観光旅行での需要が中心。一方中国では、ツアーバスにはそれほど高いクラスの車種は配置されず、高級バスはもっぱら省と省を結ぶ長距離路線運行に使われる。

この市場には現在、西安に拠点を構えるボルボを筆頭に、ケスボーラ、ベンツ、ネオプラン、そしていすゞが進出している。中国進出の時期が比較的早かったボルボがトップシェアを誇るが、広州五十鈴は先ごろ、ボルボのおひざ元に近い山西省の長距離バス会社「山西華宇客運」に10台を販売することに成功した。

広州五十鈴は来年、今年の150台(見込み)から倍以上の350台に生産台数を拡大する計画。価格もハイデッカーで180万~185万に引き下げ、年間1,500台と言われる中国の高級バス市場でさらなるシェア拡大を目指す。

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