フィリピン  2010年8月25日(水曜日)
人質事件、外交問題に発展へ:香港人の死者8人に[社会]

23日、マニラ市内で香港人旅行者ら25人を乗せた観光バスが元警官に乗っ取られた事件は、人質となった香港人のうち8人が死亡するという最悪の結末となった。アキノ大統領は犠牲者らに哀悼の意を表したが、香港特別行政区政府と中国外交部(外務省)は、ともにフィリピン政府に対し事実上の不快感を表明。香港社会では対比批判が巻き起こっている。事件の波紋拡大は避けられそうにない。

各メディアによると、フィリピン国家警察(PNP)の警官隊は23日夜、マニラ市リサール公園のキリノ・グランドスタンドで、M16ライフルで武装した元警部のローランド・メンドーサ容疑者(55)が乗っ取った観光バスに突入。銃撃戦の末、同容疑者を射殺し、車内に残っていた人質の香港人旅行者らを外に出したが、病院に運ばれた香港人のうち、24日午前中までに8人が死亡した。

突入の前、麻薬事件などで受けた懲戒免職処分の撤回を求めるメンドーサ容疑者の弟、グレゴリオ・メンドーサ2等巡査部長が、現場で兄の行動を支持するような言動を行い、逮捕されていた。弟が現場に出現したことが、火に油を注ぐ結果になったとの見方が有力なようだ。

事件が最悪の形で終わったことを受け、アキノ大統領は23日深夜、マラカニアン宮殿(大統領府)で緊急記者会見を開き、フィリピン国民を代表して、犠牲者とその遺族へは哀悼、死を免れた被害者には見舞いの意をそれぞれ表明する声明を発表した。

声明には、◆ロムロ外相が、中国の楊潔チ外交部長(外相、チはたけかんむりの下に褫のつくり)に、また香港の曽蔭権(ドナルド・ツァン)行政長官を通じて香港市民に、それぞれ深い悲しみの意を伝えたこと◆ソリマン社会福祉開発相とアルベルト・リム観光相に、生存者の治療と安全な香港帰還に向けて必要な措置を取るよう指示したこと◆自身も、メンドーサ容疑者の弟の出現が事態悪化を招いたと認識していること◆ロブレド内務地方自治相とデリマ司法相に、一連の経緯の再調査に向けて指揮を取るよう指示したこと――などが盛り込まれていた。

■怒り広がる香港

市民8人が犠牲となった香港では、国家警察をはじめとするフィリピン当局の対応などに批判が高まっている。香港の曽行政長官は23日深夜に記者会見を行い、事件を「悲劇だ」として、「マニラ旅行を楽しもうとした香港市民が犠牲になったことに失望している」「アキノ大統領に『重大な関心』を伝えようとしたが、うまくいかなかった」と発言した。またクリストバル駐香港フィリピン総領事を呼び、被害者の早期帰還への協力、香港政府に対する事件についての詳細な説明の実施をフィリピン政府に求めたという。

曽行政長官は翌24日には、ロムロ外相に自ら電話し、事件の徹底調査と迅速な説明を行うよう要求したと明らかにしている。

また香港政府は事件に伴い、同地の渡航者向け勧告としては危険度が最も高い渡航自粛勧告の対象先にフィリピンを指定した。

香港の政府機関は24日、犠牲者を悼み半旗を掲げた。

事件の一部始終は、香港のテレビ局がマニラから生中継していた。このため香港では、危機管理の専門家から芸能人に至るまで、「フィリピン国家警察の特殊部隊は低水準・無能」などという激しい非難の声を上げている。クリストバル総領事によれば、抗議の電話や電子メールが在香港フィリピン総領事館に相次いでいるもようだ。

大統領広報推進戦略企画局のカランダン長官は24日の記者会見で、悪化する香港の対比感情を踏まえ、近くハイレベルのフィリピン政府使節団を派遣し、香港政府当局者などへの背景説明を行うと明らかにした。

■中国も徹底調査求める

中国の楊外相も23日、ロムロ外相との電話で、事件の徹底調査と説明、けが人の適切な治療など善後措置をフィリピン政府に要求。中国外務省の馬朝旭・新聞司長(報道局長)も、中国政府がフィリピン政府に、滞在する中国国民の安全確保などを求めたとなどと述べた。

また中国の劉建超・駐フィリピン大使は24日、アキノ大統領、ビナイ副大統領、ロムロ外相の3人と開いた会合で、事件の徹底調査と文書による報告など3項目の要求を、フィリピン側に突きつけた。

■日本は新たな措置なし

日本の外務省は24日、NNAの取材に対し、今回の人質事件を受けて新たなフィリピンについての危険情報(渡航情報)を出すことなどは、現時点では考えていないとコメントした。同省領事局は今回の事件について「特殊なケースと認識している」と話している。

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