フィリピン 2010年2月3日(水曜日)
バターン原発再生、「10億ドル必要」の試算[公益]
マルコス政権が建設し、1回も運転することなくアキノ政権下で閉鎖されたバターン原子力発電所(BNPP、出力621メガワット=MW)を補修により再生できる否かについて事業化調査(FS)を行ってきた韓国電力公社(KEPCO)はこのほど、「再生は可能だが、補修費用が10億米ドル必要」との分析を盛り込んだ報告書を国家電力公社(Napocor)に提出した。電力公社は来月開く理事会で、対応を決めるもよう。2日付ビジネスワールドなどが伝えた。
国家電力公社のタンピンコ総裁は1日、「韓国電力が提出した報告書の内容を精査しているところ」とコメント。「今月の理事会には間に合わない」として、来月の理事会に提出するとのスケジュールを示した。10億米ドルという見積もり補修費用の妥当性は、国家電力公社の技術委員会がチェックに当たるという。
2日付ビジネスミラーによると、原子力の専門家らは、仮に出力1,000MW級の原発を新たに建設した場合、10〜15年の工期と15億〜20億米ドルの工費が必要との見積もりを示すとともに、バターン原発再生であれば、補修の工期は5年以下で済むとコメントしているもようだ。
■石油危機の産物
バターン州モロンにあるバターン原発は1976年着工。約23億米ドルの工費を費やして84年に完成した。マルコス政権が73年の第1次石油ショックに衝撃を受け、将来のエネルギー供給に強い危機感を抱いたことが、建設の背景。原子炉には、米ウエスチングハウス(現在は東芝の傘下企業)製の軽水炉を採用した。
しかしバターン原発は完成後、4,000カ所以上の欠陥が見つかるなど、安全性に重大な懸念が判明。86年の第1次エドサ革命(ピープルパワー革命)でマルコス政権を倒して誕生したアキノ政権が同年、閉鎖を決めた。
■再び脚光
ところが電力供給不安に悩む現在のアロヨ政権は、エネルギー確保に向け、再生可能エネルギーなどとともに原発に目を向けた。エネルギー省がまとめた07〜35年フィリピン・エネルギー計画では、「エネルギー純入国のフィリピンは、原油高騰の可能性をにらんで、原発計画の再開を検討しなければならない」とうたっている。
既に建設済みのバターン原発の活用案は、こうした方向性の下に浮上。電力公社は同原発の運転が可能か否かの調査を韓国電力に委託することを決め、2008年12月に覚書に調印。韓国電力は同覚書に基づき、昨年初めから調査を進めていた。
バターン原発を仮に運転した場合、発電コストは1キロワット時(kWh)当たり約2.5ペソと、電力公社の現行料金の半分以下で済むとの試算があるといい、国際的にみた高さが指摘される電気料金の値下げにも寄与する可能性も期待されているようだ。
■なお壁も
問題はまず補修コストの捻出に不可欠な立法措置。パンガシナン州選出のコファンコ下院議員が昨年、バターン原発運転に向け、韓国電力の試算額と同じ10億米ドル相当の補修費計上を盛り込んだ下院法案4631号を提出済みだが、審議はなかなか進んでいない。ただ同議員は1日、「今週中の下院第2読会通過に期待している」とコメントしたという。
同法案の特徴は、補修費用負担を電力ユーザーに求めている点。具体的には電力消費1kWh当たり0.1ペソをバターン原発補修費用の原資用として電気料金に上乗せし、徴収するとしている。
安全性懸念を背景とする反対論も根強い。非政府組織(NGO)のバヤンは「馬鹿げている上、危険だ」とバターン原発復活計画を強く非難している。「バターン原発再生に投じる巨額の資金があるなら、石油と電力への付加価値税(VAT)課税をやめるべき」と、レイエス・バヤン事務局長は話す。
お膝元バターン州のエンリケ・ガルシア知事も、同じく安全面からバターン原発の再生・運転に反対しており、同原発の復活に向けたハードルはまだ高そうだ。