出版物のご案内
タイ
復刻版 タイの政治文化 ―剛と柔―
1989年に発行された同書の復刻版。
タイ社会とはいったいどんな社会なのか? タイを知る人間にとって永遠の疑問 であり、謎であったこの命題にひとつの答えを出した不朽の名作。
クーデター、 暫定政権発足、前与党解党判決、国民投票、新憲法公布・・・ タイ政治が流動化し、今後の動向が見えないなかで、初版発行から20年を経ても色褪せないどころか、今なお生き続ける同書の意義は大きい。そして、21世紀のタイ政治社会を読み解くためのテキストとして今後も生き続けるであろう。
復刻版発刊にあたって書き下ろした『しぶとく生きる「剛と柔」』を掲載。
- ・価格 :
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- 2,000円+税
- ・四六判/240頁
- ・発行 :
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- 株式会社NNA
- ・著者 :
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- 赤木 攻(東京外国語大学特任教授)
- ・ISBN :
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- 978-4-901270-90-8
- ・発行年月日 :
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- 2007年12月
【著者略歴】
赤木 攻
1944年岡山県生まれ。
1967年に大阪外国語大学を卒業後、タイ国チュラーロンコーン大学文学部に学ぶ。
1969年大阪外国語大学に奉職、1999年同大学学長、2004年4月名誉教授、08年4月から現職。
専門は東南アジア地域研究、タイ政治・社会論。
著書に『現代アジア教育史研究』(共著 多賀出版 1983年)、『タイ農村の構造と変動』(共著 勁草書房 1987年)、訳著書に『タイ知識人の苦悩』(井村文化事業社 1984年)、最近の訳書に『奇跡の名犬物語』(世界文化社 2006年)がある。
主なコンテンツ
はじめに──「社会〈サンコム〉」という言葉
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第一章 地域社会からの出発──東北タイの一村落
一 なぜ東北タイなのか
東北タイとは トゥン・クラー・ローンハイ
二 村落の概況
三 政治社会
政治的リーダーシップ 絶対的権威=チャオプー 草分けの系譜とチャム
四 経済生活
東北タイは貧困か 弱い地主・小作関係
五 家族・親族
屋敷地共住集団 サオ・セー(墓柱)
六 社会化
児童の学習内容 社会化のエイジェント
七 小結論──「剛」と「柔」 -
第二章 歴史──国家形成
一 前近代国家──〈ムアン〉と〈クルン〉
「剛」領域の形成、ムアン 「剛」領域の強大化、クルン
中央・地方の「請負」関係
二 国民統合──文化的包摂
国民統合 武力的包摂と文化的包摂
三 国語の成立
教育の発展 国語 最初のタイ語教本『チンダーマニー』
『プラトム・コーカー』と文学 公定教本「六冊本」と印刷
ダムロンの『速習本』とコー・カイ タイ語の規範化と武装化 新方式の採用
少数民族のための教本開発 国語教科書の内容 -
第三章 政治・経済
一 「ラック・タイ」=「聖域」
『ラック・タイ』──息の長いベストセラー 民族、仏教、国王
アポロギーとしての「ラック・タイ」 「ラック・タイ」への挑戦
「聖域」の確立
二 政治の論理
政治事件の例としての「一〇・一四政変」 状況──一般状況と特定状況
政治家と政治的目的 個人ベースの人間関係と政治集団 知り合い仲間の世界
エリートと大衆、持てる者と持たざる者 五つの論理と剛・柔関係
三 反政府・体制運動
反政府・体制運動とは 高等教育機関の発達 学生運動の特質
NSCTの誕生と活動 NSCTはなぜ崩壊したか 反体制運動の特質
四 政治発展への展望
古くて新しい国家 小集団の活性化 学問の発展 出版の発達とその自由
オープン・システム 「ラック・タイ」の微調整
五 外交
外交上手と開放政策 「黄金半島作戦」──政治外交から経済外交へ
六 経済
「剛」としての農業 タイ式経営 -
第四章 言語・文化
一 タイ語
孤立語 類別詞 純粋タイ語と外来語 王語、僧語、代名詞
押韻、回転語、装飾語
二 上座部仏教
戒律主義 ブン志向
三 男女差
女性の地位は高いか 妻方居住慣行 ハレとケ -
第五章 剛・柔社会
一 狭い「剛」と広い「柔」
二 タテ関係の剛・柔
三 ヨコ関係の剛・柔
四 剛・柔社会における変動
おわりに──再び東北タイから
[参考文献]
あとがき
しぶとく生きる「剛と柔」 ─復刻版あとがきに代えて─
都市・農村パラドックス タックシンの戦略 タックシンの後進性
「剛」の尾を踏んだタックシン 状況化するタイ政治社会
タイ王国史年表