国営造船ビナシンの元会長逮捕:経営再建で政府資金注入も

40億米ドル以上の負債を抱えて経営悪化し、事業の一部分割・譲渡などにより再建が現在模索されている国営ベトナム造船グループ(ビナシン)のファム・タイン・ビン元会長(57)が4日、ハノイで逮捕された。5日付サイゴンタイムズなどが報じた。

容疑名は「経済管理に関する国家規定に故意に違反し、重大な損害を与えた罪(刑法165条)」で、事務所とホアンキエム区の自宅の家宅捜索も行われた。

共産党中央検査委員会が7月12日に示したビン氏の誤りには、◇ビナシンへの国の出資金の管理や使用上の無責任◇各案件実行の際の融資や融資保証上の無責任◇各工業団地や造船所の改良と建設に関する無責任◇海運に適さない中古船舶を多数購入し、多額の損失をもらたし、返済困難な債務を作った――などがある。

検査委員会は、ビン氏のほか、ビナシンの関係者数人について、刑法違反の疑いがあるとして、捜査機関に調査書類を送った。

グエン・タン・ズン首相は検査委員会の報告の翌日(12日)にビン元会長の職務停止を決定した。

逮捕されたビン元会長は、今後4カ月間勾留され、取り調べを受ける。

ビン氏はビナシンの社長も長期間務めた。

■「鉄くずにしたくない」

グエン・シン・フン副首相は4日、政府官房の記者会見で、「中央政府は、法律に違反したビナシンの経営陣、個人を厳格に処分する」と政府の姿勢を明らかにした。フン副首相は7日にも、ビナシンと会合を持ち、対処を検討する予定だ。

フン副首相は同じ会見で、「ビナシンに再建資金を提供するために、政府は必要に応じて、債券の発行を検討する可能性がある」と述べ、ビナシン再建への強い意向を示した。6月の段階で104兆ドン(55億米ドル)とされたビナシンの資産を活用すれば、造船業を再び発展させることができるという。フン氏は、「ビナシンを破産させれば、造船所や工場が鉄くずの山になってしまう」と述べ、再建の必要性を強調した。

フン副首相によれば、再建が順調に進めば、2012年には赤字経営を脱し、13~14年には黒字に転化、15年には新しいビナシンとして安定経営を確立できる。

再建されたビナシンは、多角経営を行わず、◇造船◇船舶修理◇船舶の部材産業(クレーン、エンジン、鋼板など)――の各分野に集中する。

ビナシンはこれまで、セメント生産、観光など、本業から離れた多くの分野へ経営を広げていた。

従来ビナシンが展開していた事業は数百件にも上ったが、現在は28件に縮小され、当面はそのうちの13件に集中している。

■海運には参加させず

ビナシンの一部事業は、国営ベトナム石油ガスグループ(ペトロベトナム)とベトナム海運総公社(ビナライン)が引き受ける。フン副首相は、海運事業がビナラインへ譲渡されることについて、「ビナラインは当初困難に直面すると思われるが、海運業に十分な経験を有しており、克服が可能」との見方を示した。

フン副首相は、「ビナシンは『船舶は購入しない』と言明した直後に、船舶を購入した」と、ビナシンが不適切な方法で、船舶を次々に購入したことを指摘した。ビナシンは中古船舶を多数購入し、国家財政に大きな損失をもたらしたとされる。

ビナシンが海運用に購入した船舶は、ビナラインに引き渡されており、今後ビナシンには海運業を行わせないという。ビナラインは、ビナシンが購入した船舶36隻を引き受け、そのうちすでに26隻が使用され、残りもまもなく使用される。

■再建必要か

ビナシンの経営悪化問題には、ベトナム国営企業の構造的な問題がある。同社会長や取締役はグエン・タン・ズン首相が直接指名し選出されているため、首相の指導のみを仰ぐ。財務省や商工省など関連省庁はビナシンとの対立を避ける道を選んでしまう。同族で子会社の経営陣を固めるなども明らかになっている。

ベトナムは、造船好況の2007年には一時的に受注ベースで世界5位の造船大国となった。ただ、ベトナムの造船業は裾野産業も未成熟で、受注した1,000万米ドル程度のバルク(バラ積み)船では、鋼板や操舵設備など900万米ドル分は国外から調達するレベル。他国の受注残からベトナムへの発注が一時的に増えただけだったが、ビナシンは過信、過剰な設備投資に走った経緯がある。


関連国・地域: ベトナム
関連業種: 経済一般・統計鉄鋼・金属製造一般天然資源金融・保険運輸・倉庫社会・事件政治

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