【トップは語る】レオパレス21 取締役 副社長執行役員:深山忠広 国際事業を本格化 アジアへの貢献意識して

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Photo by Mayumi TAKAHASHI

ワンルームを中心に約57万戸と業界トップクラスの賃貸管理戸数を誇るレオパレス21。2013年から本格化させた国際事業では、アジアに16拠点を持ち、日系企業向けのサービスなどビジネスを急速に拡大している。「成長戦略事業」に位置づけている国際事業について、深山副社長に話を聞いた。

今はどんな企業もアジアに進出するようになりました。レオパレス21が日本国内で管理している賃貸物件のうち、54%を法人利用が占めています。こうしたベースがある中、他社との差別化を目的として、海外にもワンストップで同じサービスを提供していこうと考えました。

もともと東アジアには現地法人や支店を持ち、主に留学生を対象に日本国内のレオパレス物件を紹介するインバウンド事業を展開していましたが、次は海外進出する企業にも物件を仲介しようと、2013年からタイとベトナムを皮切りに東南アジア諸国連合(ASEAN)でのアウトバウンド事業を開始しました。

日本の社宅のような感覚で住める住宅を提供しようという考えです。建物の備品が壊れた時のレスポンスなど、日本のサービスは非常にきめ細かいです。こういった良い習慣は海外でも取り入れていこうと思いますので、建物の管理には特に力を入れています。

■駐在員向けに自社物件を運用

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——レオパレス21の国際事業では、サービスアパートメント(部屋の清掃などホテルのようなサービスが付くアパート)やサービスオフィス(業務に必要な備品や設備に加え、共有の会議室などを備えたオフィス)の運営も手掛ける。海外初の自社運営物件は、15年10月にタイ・チョンブリー県のシラチャー郡でオープンしたサービスアパートだった

この物件は、日系企業が多い工業地帯の近くでタイ人が所有し、主に日本人向けに運営していたものを当社が購入しました。当初から稼働率が80%くらいありましたが、日本国内での事業のノウハウを生かし、今後のサービスなどを日本人的な感覚で運営していこうと考えました。おかげさまで稼働率は95%くらいまで上がっています。24時間のセキュリティー体制の実現や、当社スタッフによる日本語対応、細かい備品の設置、清掃まで、全てを日本のクオリティーに合わせるように管理・運営しています。

東南アジアは日本に比べ、サービスが属人的になるということがありますよね。ですから、そのように人に頼るのではなく、均一なサービスを提供できる仕組みを作っていく必要があると思っています。

タイは東南アジアの中でホスピタリティーが非常に高い国だと認識していますが、サービスをよりきめ細かくすれば顧客満足度はさらに上がっていくのではないかと思います。セキュリティーシステムを導入したり、テレビモニターやインフォメーションボードを替えたり、当社ではこういった細かい改善を進めています。

16年8月には、マスターリース(転貸を前提にオーナーから不動産を一棟賃借すること)形式でベトナム・ハノイ市の中心部にサービスアパートの運営を始めました。こちらは、現地のデベロッパーが日本人などを対象に作った物件で、当社が運営を引き継いでからはさらに改装を行っており、フィットネスジムやレストランなどを新たに設置する予定です。

■初の開発物件を今年開業

今年6月頃には、海外で初めての自社開発物件としてカンボジアの首都プノンペンでサービスアパートの開業を予定しています。物件が位置するのは高級住宅地のトゥールコックエリアで、14年にオープンしたショッピングモール「TKアベニュー」があるほか、空港へのアクセスも30分程度と生活環境は良好です。サービスアパートとしては高いクオリティーのものを目指しています。

これまでの自社運用物件では主に日本人を対象にみてきましたが、プノンペンではより大きいマーケットをつかむため、日本人も韓国人も中国人も欧米の方にも対応できるものを作ろうと考えました。

当社の海外進出先の条件は、まず日本企業が多く進出していること。そして、日本の法人需要をベースとした仲介業だけでは得られる利益が限られるので、さらに不動産投資もできることです。現在アジアに展開する16拠点のうち、カンボジアは投資の規制が非常に緩やかなため、当社初の自社開発計画が進みました。為替決済がドル建てで事業化に適していたほか、プノンペンの成長率や外資系企業の進出の活発さなども魅力でした。

色々な国がありますが、外資規制は緩和されているところもあれば、強化されている国もあります。今後もリサーチをしながら海外拠点を最適な数まで増やしていきたいと思っています。

また、プノンペンの物件からは当社の国際事業のブランドを戦略的に広めようと、さまざまな施策を検討中です。日系企業の間では、もともとの当社の国内における認知度もあり、ウェブサイトの整備や紙媒体への広告掲載から国際事業の認知度も高まってきましたが、ASEANで展開する外資系企業に対する認知度向上は今後の課題です。ブランドイメージとしては、建物もサービスも高品質のもので展開していくと決めています。

また、16年2月からミャンマーのヤンゴンで開催している男子プロゴルフツアー「レオパレス21ミャンマーオープン」も、ASEANにおける知名度アップを図るブランド戦略の一環です。

海外での人材育成では、今は目先の採算をやや度外視し、日本人を少し多く赴任させ、教育に力を入れています。グループとしては、海外拠点のリーダークラスの従業員に定期的に交代で日本での研修を受けてもらっています。1週間くらい、みっちりとスケジュールを組みます。研修生は、国内物件に入居する外国人向けの当社のサービス拠点や物件の見学、各事業の体験などを行います。

こうした従業員教育の成果もあり、海外における日系の仲介事業者の中では当社サービスの対応力の高さには手応えを感じています。現地では非常に優秀な方々に働いていただいていると思っています。

■まだまだ仕込みの段階

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タイ・シラチャーのサービスアパートメント「ステラレジデンス」の室内。2ベッドルームの住戸もあり、単身者だけでなく家族でも利用できるのが特徴だ(レオパレス21提供)

——国際事業が本格化したのは13年で、16年3月期の連結売上高(約5,120億円)に占めた比率は1%未満。ただ、本社のエントランスには地球儀をかたどったモニュメントが飾られ、今後の戦略事業としての意気込みを感じさせる

現在は具体的な数値目標は設定していませんが、今後10年で年間売上高は100億円以上の規模にもっていかなければならないと思います。また、利益の10%くらいを国際事業であげていきたいです。

今は不動産だけでなく、さまざまな投資の提案もあり、どこまでを国際事業として含めるかというのも考えなければいけませんね。数字も非常に重要ですが、やはり拠点やネットワークをもつことで、国内事業とのシナジー効果が強くなるのも大切なのではないかと思っています。

今はタイで購入した物件を自社で運営していますが、ずっと保有するつもりはありません。やはりどこかで出口というものを考えないといけません。こうした部分が大きな売り上げや利益につながりますが、まだまだ仕込みの段階です。

将来は、「海外に行ってもレオパレスがあるから安心だ」と言ってもらえる企業にしたいですね。世の中における企業に対する評価は時代によって異なってきます。昔は、特にリーマンショックの前などはよく「業績良ければ全て良し」といった感じでした。しかし、今の企業の価値観は社会や地域への貢献、また国際事業ならアジアへの貢献といったことも一緒に意識していかなければいけない。

当社は海外では現在、仲介事業や投資事業のほか、物件の図面の制作などをベトナムへアウトソーシングしています。また、これまでベトナム人の技能実習生を当社の協力工務店に配属していますが、今年4月からはレオパレス本体でも受け入れられるようにします。

さらに、当社は高齢者事業も今後の成長分野としていますから、外国人の介護人材の受け入れ拡大に向けた関連法の整備が進む中でフィリピンからの人材受け入れも計画しています。国内の人材不足を外国の方で補い、外国の方が日本で得た技術を帰国後に生かしてくれれば、全てがよくなるのではないでしょうか。現地と日本にある壁をなくし、できるだけ交流をするようにしていきたいです。

実はかつて、中国と米国に拠点を設けたことがありました。バブル崩壊もあり、事業はうまくいきませんでしたが、海外に向けて考えるという企業のDNAが昔からあったのです。少子高齢化が進む今、国内市場は縮小傾向にあり、非常に厳しいです。「五輪後」は特に見通しが不透明ですね。一方、ASEANの国々は成長していますので、今回は本格的に成功するまでやろうと思っています。

インバウンド事業で海外に進出したのは、ほかの不動産や賃貸の業者と比べて早い方だと思いますが、当社が海外で成し遂げたことはいまだ無いと私は考えています。今からやらなきゃいけないし、やっていきたい。短期的な視点だけで見るのではなく、長期的なビジョンを持って取り組んでいきたいと思います。(聞き手・大石秋太郎)

■オフの横顔

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「ゴルフが趣味で、会社でもメンバーを募ってコンペを主催しています。ネットショッピングが好きなので、ゴルフウエアやドライバーも通販で購入することがあります」 一緒にコースを回るレオパレス21の社員に聞くと、仕事では厳しい表情のことが多いが、オフの時は笑顔が多く、気さくな雰囲気。プレイ中は仕事の話を一切しないが、仕事と同様、常に勝つイメージを持って取り組むそうだ。

【プロフィル】

深山忠広(みやま・ただひろ)

1966年生まれ、50歳。85年にミヤマ(現レオパレス21)入社。2003年から取締役、14年から現職。現在は営業総本部長、コーポレート業務推進本部長、賃貸事業部長を兼任する。13年からアウトバウンド事業を主導し、国際事業を統括している。経営者としてのあり方は、「常に謙虚でないといけないと思います。やはり5年後や10年後を常に意識していたい」

※このウェブサイト特集「トップは語る」は、NNAの季刊ビジネス媒体「カンパサール」2017年1月号(第26号)<http://www.nna.jp/corp_contents/service/target/kanpasar/backnumber/170101/>から転載しています。


関連国・地域: タイベトナムカンボジアフィリピン日本アジア
関連業種: 経済一般・統計建設・不動産社会・事件

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