【アジア取材ノート】アジア経済圏、西の彼方を見つめて 「火の国」アゼルバイジャンより

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首都バクーのシンボル、フレイムタワー。高さ約200メートルの3棟からなる高層インテリジェントビルで、市内どこからでもそびえ立つ威容を見ることができる。曲線的かつ優美な壁面には夜ごとゆらめく赤い炎の映像が投影され、まるで巨大な火柱のような幻想的な光景を織りなす。

アジア経済圏の果ては、どこにあるのか。グローバルの時代と言われるが、経済は今なお国境、政治、民族、文化といった古くからの地域や土俗のしがらみが入り交じり、油染みのように複雑な輪郭を描くものだ。アジア経済圏の西に隣り合う国に立ち、その辺縁を外から見つめた。(岡下貴寛=文・写真)

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古代ギリシャ人は、クリミア半島付近に流れ込むドン川をヨーロッパの東の限界とし、そこから先を東方世界(オリエント)と呼んだ。

現代ではアジアの西の果てがどこを指すのか諸説あるが、カスピ海やウラル山脈を欧州との地理的な境界とする説がよく知られている。では、アジア経済圏の果てとなればどうか。成長著しいアジア経済の影響力は、西方にはどこまで及んでいるのだろうか。

現代版シルクロード「一帯一路」構想を掲げる中国は、カザフスタンやトルクメニスタンといった中央アジアの資源国への投資・進出を加速し、原油や天然ガスなどエネルギー資源の確保に熱心だ。中国企業が進出するだけではなく、作業に従事する中国人労働者や中国製の機材も大量に送り込み、強い存在感を放つ。韓国も、中央アジアには韓国系住民のコミュニティが以前から多くあったという歴史的な経緯を生かし、サムスンやLG、現代といった主要グループを筆頭に現地での経済活動に力を入れる。カスピ海東側の中央アジア諸国について言えば、東アジアの経済先進国との結びつきは間違いなく強まってきている。

だが、カスピ海を西に越えると世界は一変する。カスピ海西岸の国アゼルバイジャンは、旧ソビエト連邦の構成国にしてイスラム教徒シーア派が多数を占める。地理上も歴史上も東西文明の十字路のまっただ中にあり、ときに欧州的な、ロシア的な、トルコ的な、中東的な、さまざまな顔を見せる。それでいて、いずれとも本質を異にする存在だ。

アジアに隣接していながら、決してアジアではない。この国の地平に立てば、隣人たる彼らがアジアをどのように捉えているか、そして西への拡大を目指すアジア経済の領域の限界が見えてくるのではないかと考えた。

■「第二のドバイ」の声も

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バクーの繁華街。ショッピングエリアには欧州風の優美な建物が整然と並ぶ。ちなみに、5日間の滞在で日本、韓国、中国など東アジアの人に街中で遭遇することはなかった。

アゼルバイジャン共和国はお世辞にも日本での知名度が高いとはいえない。在留邦人数は2015年4月時点でわずか35人。日本のニュースで動向が報じられることはほとんどなく、研究する専門家も非常に少ない。どこにあるのか、位置も普通は知らないだろう。

地理的にはロシア連邦の南西、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地方に位置する。北海道と同じくらいの国土に、主としてトルコ系民族の住民およそ1,000万人が暮らす中小規模の国だ。北にロシア、南にイラン、西にトルコが隣接し、ロシア・中東・欧州の勢力が向かい合う狭間で、地政学的には非常に重要な位置に存在する。ソ連が崩壊した1991年に独立した同国は、いずれの勢力にも明確にはくみせず、付かず離れず一定の距離を保つバランス外交を行いながら、独立性の高い立場を保持してきた。

世界的には産油国として知られる。かつて、世界で最も古く開発された産油国としてその名をとどろかせた。第二次大戦前には世界の石油産出量の約半分を同国が占めていたほどだ。かのヒトラーはソ連を攻める際、真っ先にアゼルバイジャンのバクー油田に向かったという史実もあり、現代日本での無名さとは裏腹に、同国のバクー油田といえば日本の社会の教科書に載っていた時期もあった。

今も石油・ガスが産業の筆頭で、全輸出の92.4%を鉱物性資源が占める。石油や天然ガスが地表に湧出し、自然に燃える場所がいくつも見られるため、紀元前に誕生した火を信仰対象とするゾロアスター教(拝火教)の聖地になった。古来より「火の国」の二つ名でも呼ばれる。

豊富なエネルギー資源に恵まれる同国は、2000年代半ばに欧州向けの大規模な石油パイプラインの開発に成功した。資源高騰の追い風もあって急激な経済成長を遂げる。13年の実質GDP成長率は5.8%、1人当たりGDPは約8,000ドルに迫る。

非石油セクターの成長率も9.8%増と高い値を示すが、これは機械、食品、建材といった鉱工業生産や建設部門が伸長しているためだ。これらの成長を支えるのも、やはり石油ガス部門が稼いだ収益を元とする公共投資である。

現在は潤沢なオイルマネーを背景に都市の近代化に着手し、十数兆円にも上る超巨大予算をかけて新たな都市開発の計画を進めている。カスピ海の海上に人工島を造成し、そこに高さ1,050メートルのアゼルバイジャンタワー(16年着工予定)をはじめとする未来都市を建設するという構想だ。

実現すれば、現存する高さ世界一のビルであるドバイのブルジュ・ハリファ(約830メートル)やサウジアラビアで建設中のキングダムタワー(約1,000メートル)をもしのぐ、とてつもない建造物となる。

日本でも一部の投資家や起業家は「第二のドバイ」と計画に注目し、現地での視察やビジネス投資を熱心に呼びかける動きもある。

■欧州と見まがう街の姿

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巨大なKFCの店舗。元駅舎だけあって、内部には数百人は同時に利用できそうな空間が広がる。とてもダイナミック

カスピ海の西岸から突き出たアブシェロン半島、その先端付近の南側に首都バクーはある。人口220万人。海沿いのため年中強い風が吹き、古くから「風の街」と呼ばれてきた。冬ともなれば市民はコートやジャンパーの襟を立て、身をすくめながら通りを行き交う。

近年は海岸沿いの市街地を中心に再開発が進められ、市内の至るところでビルや高層住宅の新設が相次いでいる。

街はモダンな雰囲気で活気がある。建物の多くは欧州風のたたずまいで、EUの主要都市と言っても通用しそうな雰囲気だ。自家用車が大量に行き交う車社会だが、車道や信号機などのインフラ設備がよく整備され、アジアの新興都市のように激しく渋滞する様子はない。鉄道、地下鉄、バス、タクシーといった公共交通機関も充実しており、旅行者でも市の隅々まで自在に移動することができる。

中心部の商業地に行けば、欧米の高級ファッションブランド、百貨店、ショッピングセンター、マクドナルドやケンタッキーフライドチキン(KFC)など近代的なファストフードチェーンの店舗が居並ぶ。ちなみに市中央の鉄道駅に隣接するKFCでは、旧ソ連時代からあった鉄道の駅舎を丸ごと改装した世界最大級という店舗も営業する。

イスラム教徒(ムスリム)が大多数の国であるにもかかわらず、市民の服装はどちらかといえばロシアや旧ソ連圏の東欧諸国のイメージに近い。男女ともに黒、グレー、茶といった地味な色のジャンパーやコート姿が多く、アラブやアジアのイスラム教国のように一見してムスリムと分かるような姿は数十人に1人いるかどうか、という割合だ。

街で危険な雰囲気を感じることはなかった。夜もふけた遅い時間でも女性や子どもを含む家族連れがショッピングや外食を楽しんだり、深夜にもかかわらず散歩やジョギングする姿が多く見られた。今回の渡航前に日本で、政府、政府系機関、研究機関などの専門家に現地の治安について尋ねると、みな一様に「治安は日本と変わらないほど良い」と断言していたが、それも大いにうなずけた。

■日系大手が高級化粧品を投入

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日本の商品やサービス、日系企業の存在感はどうだろうか。製品で最もよく目にするのは、やはり自動車だ。トヨタ、ホンダ、日産、三菱、スズキ、バスならいすゞといった、われわれになじみ深いメーカーの日本車が頻繁に走っている。トヨタ車ではレクサスやプリウスといった価格の張る車も珍しくない。現代自動車や起亜の車も時折見かけるが、バスやトラックも含めれば日本車の方が多いように感じる。また、建築現場ではクレーン車などコマツ製の重機が活躍していた。

それから家電。先進国と同じような専門の量販店もある。テレビや白物家電なら日立、東芝、シャープ、パナソニック、カメラやビデオなど精密な光学機器ではソニー、ニコン、キヤノン、音響関連ならパイオニアと、日本のトップブランドの製品が一通りそろう。韓国サムスン電子、LG電子、中国ハイアールなどアジアのメーカー製品も豊富で、売り場のシェアはアジアと欧米のメーカーが拮抗(きっこう)しているようだ。

化粧品大手は高級品市場として熱い視線を注いでいる。すでに多くの欧米系の化粧品ブランドが販売を開始しており、日系もここ5~6年で乗り出してきた。

資生堂は2009年、アゼルバイジャンに日本の化粧品会社として初めて本格的に参入した。同国市場については「女性たちの美しくなりたいという意識と高級化粧品に対する関心はともに高まっており、化粧品のニーズも多様化してきた。今後も成長が期待できる」といい、高品質の商品やカウンセリングサービスを通じ、ブランドの浸透を図る。

ライバルのカネボウ化粧品も2012年、最高級化粧品市場をターゲットに展開する「SENSAI」ブランドを投入。高級専門店を中心に販売を開始した。「化粧品市場が拡大傾向にあり、中でも富裕層を中心として高級化粧品の市場も活発化している」と期待を寄せる。

渡航前に現地の情勢を教えてくれた日本の政府系機関の調査担当者は、日系企業の進出は徐々に進んでいるが東南アジアやインドほどの勢いはまだないと話す。

「アゼルバイジャンは外資誘致を掲げてはいるが、開放のスピードは遅くまだまだ本格的なものではない。ただ、石油関係で潤う高所得層はそれなりに多く、高級品の売れる市場潜在性がある。例えばトヨタの場合は、外資の規制緩和に積極的な隣国ジョージアに拠点を設けて、アゼルバイジャンに向けた販売を行っている」(同担当者)

現地では日本製品は評価されており、消費地としての魅力もある。しかし、本格的な進出となると「外資規制や日系企業の現地のコネクションの弱さから効率的な展開が難しい」というのが、ほかの専門家たちも含めて一致した見方だった。

■国家プロジェクトに参画する伊藤忠

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伊藤忠が参画するACGプロジェクトは、1997年に生産を開始。近年の生産実績は日量65万5,000バレルに上る(2013年)。写真は14年に稼働した西チラグ油田の施設(AIOC提供)

そうした中、同国で最も存在感を発揮する日系企業が伊藤忠商事である。日系企業としてはおそらく最も早い1990年代半ばの段階から、同国の経済の柱たる石油産業に進出。幸い、渡航前に担当者に取材することができた。

同社は原油生産とそれを運ぶパイプラインの2つの大きなプロジェクトに参画する。前者はカスピ海の沖合に存在する3つの油田の頭文字から通称「ACGプロジェクト」と呼ばれる。1994年、ヘイダル・アリエフ前大統領の時代に英BPや米エクソンなど欧米系石油メジャーの参入が決まったことで「世紀の契約」と話題になった。伊藤忠は1996年に参画した(参画比率は現在4.3%)。

プロジェクトの主体はアゼルバイジャンの国営石油会社SOCARの他、米国、トルコ、インド、ノルウェーなどの国際色豊かなコンソーシアムが主体となり、操業オペレーターは英国のBPが担当。日本からは国際石油開発帝石も参加する。

もう1つの事業が、石油販売に欠かせないパイプラインだ。カスピ海は閉鎖した内海でどこにも通じておらず、石油を輸送船で運び出すことはできない。90年代までは主にロシアのパイプラインを使い黒海を経由していたが、より安定的に国際市場にアクセスする手段が必要だった。そこで99年、伊藤忠を含むACGプロジェクトやカスピ海域で計画される他の石油ガス開発プロジェクトの参加者が主体となり「BTCパイプライン」の建設が決定。2002年に着工し、06年には通油を開始した。

BTCとはパイプラインが通過する3カ国の都市名、アゼルバイジャンのバクー(B)、ジョージアのトビリシ(T)、トルコのジェイハン(C)からとった名で、ACGや周辺鉱区で生産された石油を地中海沿岸のジェイハンまで全長1,768キロメートルにわたって送油し、そこからタンカーで欧州に出荷する。この施設が、アゼルバイジャンと欧州との関係をより深化させ、欧州にとってはロシア以外のエネルギー供給源の確保につながった。

伊藤忠でプロジェクトを担当するE&P事業推進部の高井芳規氏(※所属部署は2015年1月取材当時)は「ここで生産する石油はアゼリライトと呼ばれる。軽い成分を抽出しやすい特性があるので、マーケットでは比較的高値で取り引きされる」と品質の優位性を説明する。

■天然ガス部門の重要性増す

ただ、最大の武器であるはずの原油には懸念すべき側面もある。2008年には1バレル147ドルの史上最高値を付けた原油の国際価格だが、現在は40ドル前後をさまよう。石油依存といってもいい経済構造のアゼルバイジャンにとっては、長引く原油価格の低迷は深刻な問題だ。

貿易統計によると14年の輸出(全体)は長期間続く石油国際価格の下落による影響で前年比9%減少している。13年まで5%台以上の水準を保っていた実質GDP成長率も、14年には2.8%と半分ほどまでに落ち込んだ。政府も石油一極集中の体制を脱しようと産業多角化に向けた号令を飛ばしてはいるが、長年原油で潤ってきた国の産業構造を転換するのは容易ではない。なかなか実効性のある施策を打ち出せていないのが現実だ。

そうした中、アゼルバイジャンでは今後、対外的なカードとしての意味も含め、天然ガスの重要性が高まってくるのではと高井氏は指摘する。

「カスピ海には有望なガス田も複数あることが分かっている。現在は主に国内消費用とトルコ向けだが、さらにギリシャ、ブルガリア、最終的にイタリアにもパイプラインでつなげて欧州まで届けようとしている。ウクライナ問題で欧州のエネルギー供給における地政学的リスクが高まってきた。そうした中、アゼルバイジャンのガス部門は政治的にも重要なセクターとなってくるだろう」(高井氏)。

その言葉を裏付ける動きもある。15年11月、トルコによりロシアの戦闘機が撃墜され、ロシアのプーチン大統領はトルコを強く非難。トルコへの経済制裁を発動するなど、国際的な緊張が一気に高まった。ところがトルコは制裁が発動されるやいなや、首相がアゼルバイジャンの大統領に面会し、2018年に新設を予定するガスパイプライン計画を前倒しする約束を取り付けた。周辺国に政治的な緊張があるほど、アゼルバイジャンの石油ガスは危機時のポートフォリオ的な資源として価値を高めるのかもしれない。

■市場としてアジアと結びつく

アゼルバイジャンという国の意識は、どこを向いているのか。そして、地政学的にどのような勢力に加わろうとしているのか。彼らが選ぶのはアジアなのか欧州なのか、それとも中東やロシアなのか。

所属する国際組織や開催する国際的イベントを見る限り、欧州との距離が近いように見える。2012年に欧州の有名な音楽祭、15年にはユーロオリンピックの第1回大会がバクーで開催された。アジア開発銀行の対象国ではあるが、同時に欧州復興開発銀行の対象国でもあり、後者の方が現地でのプレゼンスも大きい。先に述べたように、原油・ガスなどエネルギーの供給先としても欧州との結びつきが強まる方向にあるようにみえる。

一方、今回話を聞くことができた専門家の一人で、ロシアNIS貿易会の中馬瑞貴研究員は、それを一部打ち消す。

「同国にアジアの要素はほとんどないが、EUの枠組みに入りたいという感覚もないと思う。彼ら自身はアジア、欧州、ロシア、中東の間に自国があることが最大の利点で、それらのどれでもない第三極でありたいと考えている」と語る。

アジアにとって、同国が持つ可能性とはどのようなものだろうか。アジア経済圏に隣接する産油国だが、日本、韓国、中国といった東アジアの国々が直接、アゼルバイジャンの資源の恩恵にあずかるのは、現実的ではなさそうだ。

中馬氏は、貿易や市場としてアプローチが拡大する見込みはあると指摘する。

「アジアから欧州へ輸出するときは直線で運ぶ方が当然楽。アゼルバイジャン、ジョージア、トルコでは各国を結ぶ鉄道の整備が進んでいる。黒海に出られれば欧州まで持って行けるので、そのように東西に物を運べるようになれば、物流の観点からアジアにとっては魅力的だ。また、同国は人口がまだ減っておらず、一定の所得水準の人がたくさんいる。物を買ってくれる市場としての魅力はある」(中馬氏)

中馬氏の指摘から考えると、日系企業にとっては資生堂やカネボウのように高付加価値の商品による品質競争に持ち込みやすいエリアなのかもしれない。そうなら価格競争力に縛られやすいアジアよりも、日系企業が本来得意とする品質面でのアプローチが有効で、そうした商材を持つ日系企業も少なくはないだろう。

その際、先に挙げたトヨタのように規制緩和が進むジョージアなど近隣国に拠点を置いて、消費地のアゼルバイジャンを攻める。周辺国への進出も含めた面展開を行う戦略も効果的だと考えられる。

近い将来、数年後あるいは十数年後、アジアの経済圏がカスピ海を越え、さらに西へ広がるのは間違いない。西方へのゲートウエーであるアゼルバイジャン。そこはアジアでもなく欧州でもない、中東やロシアとも全く異なる。その未知の領域に日系企業は挑むことになるだろう。

■知られざる顔1:トルコ人と通訳なしで話せる

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カスピ海の魚を売る市場の従業員。親日国トルコの影響か、日本や日本製品の印象は良好。最近は日本食がちょっとしたブームで、新しいショッピングモールのフードコートにはすしの店が出ている

主要な民族はトルコ系のアゼルバイジャン人で人口の91%を占める。そのためトルコとは兄弟のように国同士が親しく、トルコ資本の企業も多い。前大統領がガンになった時はトルコで治療を受けたほどだ。言語的にもアゼルバイジャン語とトルコ語は通訳なしで会話が可能。

宗教はイスラム教シーア派が全体の93%と圧倒的だが、日常の存在感は薄い。「ソ連時代は宗教が禁止されていたせいか、ソーセージや豚肉を普通に食べるし、コーランを見たことがないとか、ヒジャブ(女性イスラム教徒の頭巾)も知らないという人が多かった。日本における仏教のような形に近い」(政府系機関の調査担当者)

同じシーア派の国、イランも友好国で関係が深い。イラン北部は実はアゼルバイジャン系のイラン人が居住するエリアで、最高権力者であるホメイニ師をはじめ、指導層の多くが北部出身のアゼルバイジャン系という。イランでは「アゼルバイジャンはすでにイランを占領している」というジョークもあるとか。

ちなみに、同国出身の有名人には第二次大戦中にソ連軍スパイとして日本で暗躍したリヒャルト・ゾルゲがいる。また、ダイナマイトの発明者でありノーベル賞を創設したアルフレッド・ノーベルと彼の兄弟はバクー油田で石油事業を手がけ、大きな利益を手にしたことで知られる。

■知られざる顔2:イスラエルとも深いつながり

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ちなみに、バクー市内のイスラエル大使館があるビルには日本大使館も入っており、イスラエル大使館とともに厳重に守られている。写真は両国の大使館が掲げる国旗

面白いのは、イスラム教の国でありながらイスラエルと非常に強くつながっていることだ。

もともと、バクー油田はユダヤ系資本が開発したという歴史的な経緯から、今もイスラエルの石油需要の4~6割ものかなり大きな割合をアゼルバイジャンが輸出。BTCパイプラインを通過してトルコから船でイスラエルまで運ばれている。バクー市内の建築物もロスチャイルドなどのユダヤ系財閥が造った欧州風のものが多い。アゼルバイジャンの発展はユダヤ系資本の存在が欠かせなかったのである。

もしも、アゼルバイジャン政府が反イスラエルになれば、イスラエルは危機的状況に陥る。それは隣国のイランも分かっており、イランとしてはアゼルバイジャンに反イスラエルの立場に立ってほしい。イランとも友好的なアゼルバイジャンだが、イランの国境ではアゼルバイジャン政府を批判するような放送も流されているという。非常に複雑な関係だ。

※このウェブサイトの新特集「アジア取材ノート」は、アジアを横断的かつ深く掘り下げる、NNA倶楽部の会員向け月刊会報「アジア通」2016年1月号<http://www.nna.jp/lite/>から転載しています。


関連国・地域: 日本ロシア中央アジア中東欧州
関連業種: 経済一般・統計天然資源商業・サービス社会・事件

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