《ワイドリポート》NNA編集長が語る「アジア経済」

エヌ・エヌ・エー(NNA)は9月29日、汐留メディアタワーでNNA倶楽部アジア会~広報編~を開催した。企業の広報担当者、約40人が参加した。

第1部「アジア経済はいまどうなっているか」では、NNA各拠点の編集長などがアジア経済について概況を語った。

■中国 吉沢健一編集長

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吉沢健一編集長(NNA撮影)

中国は消費者物価指数(CPI)が1%台前半、工業出荷価格指数(PPI)も0%を切る状態で、企業が物を作って売っても儲けにくくなっている環境だ。鉄鋼、石炭などの過剰生産が問題になっており、その中で2016年9月、鉄鋼大手の宝山鋼鉄と武漢鋼鉄が合併を発表。ただ過剰生産が抑制されると鉄鋼の価格が上がり、中小の製鉄所の増産を招くという矛盾を抱えている。庶民が投資しているのは不動産。人口13億7,000万人のうち、いまだ6億人が農村に住んでいるが、2020年までに1億人を都市部に住ませるという大きな計画があり、都市の住宅需要は今後も出てくる。全体的には中国の成長はうまくコントロールされている。

■香港 黒川真吾編集長

香港経済は直近では上向き始め、失業率も低い。ただ今後の視界は良好ではない。悪化が顕著なのは観光と小売りで、中国人観光客の減少が主因。香港ドルが上昇し、買物先としての魅力が薄れ、旅行先が日韓、台湾、欧州などに流れている。中国の観光客の質が変わり、お金をあまり使わないため小売業が厳しい。唯一、生き残りそうなのは金融で、そこに特化していく都市になるのではないかと言われている。ただ中国本土も金融改革を進めているため、開放度具合によっては優位性は失われていくのではないか。政治では民主派議員による議事妨害がひどく、インフラ建設などの予算案が下りにくい状況で、経済面でマイナス要因だ。

■台湾 長野雅史編集員室長

民進党の新政権は労働環境や社会問題の改善を重視し、長時間労働や賃金の改善を目指すが、経済界の反発が強い。中台関係では、新政権が「一つの中国」の受け入れを明言せず、対話は中断。中国側が台湾への旅行者の数を減らしており、観光産業には大きな打撃だ。経済成長率は15年は1%を切り、16年も1%台に留まりそう。台湾経済を支える電子産業は、これまで電子機器の受託製造と黒子役だったが変わりつつある。シャープを買収した鴻海精密工業は16年、ノキアも買収。年末か来年にノキアブランドのスマートフォンを出すのではと言われている。

■韓国 坂部哲生ソウル支局長代理

韓国では16年9月に汚職防止法が施行された。既存の賄賂罪と大きく違う点は、例えば食事の接待の上限が3万ウォン(約2,700円)、贈り物は5万ウォンと細かく定められ、それを超えると厳しい処罰を受けること。韓国のビジネス文化や風習などに大きな変革をもたらす法律として、公務員は戦々恐々としている。セウォル号事件では港湾当局が過積載を見過ごしたことに加え、先日発生した地震では、耐震設計された建築物の比率が6.8%と判明。政府の未熟なリスク管理に不信感が強まっている。家計負債が1,200兆ウォンを超えており、消費の抑制なども課題になっている。

■ベトナム 小堀栄之編集長

経済成長率が6%を超え、経済は順調だが、経済成長のひずみが少し出てきた印象がある。象徴的な事件が16年4月、中部の魚の大量死。これは政権が企業を優遇しているから起きたと、政権への不満のはけ口にされつつある。台湾系フォルモサ・ハティン・スチールの製鉄所から出る廃棄物が原因と政府が公式に発表したが、まだ謎が多い。ベトナムは安全や健康志向が高く、そこに環境問題がかぶさってきた。これからベトナム産の食べ物に対する消費者の反応がどうなっていくのか。日系企業はプラントなどを作っており、環境に関する締め付けが厳しくなるのか、あるいは環境技術に対する需要が高まって、日系企業に勝機が生まれるか、見極めていきたい。

■シンガポール 野村智編集長

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野村智編集長(NNA撮影)

最大の輸出先の中国経済の減速などで、経済は低調が続き、16年は1.8%程度の成長を予測が見込まれる。直近の失業率が高まり、政府は国民の雇用を守るために外国人労働者の流入を制限する方策を進め、7月に就労ビザの取得要件を厳格化すると発表。17年1月から取得に必要な最低給与額を引き上げる。これにより日系企業に影響が出る可能性があるかはが、まだ不透明な状況だ。政府は経済発展のために新しい産業の育成に注力。小売りや飲食店などは人手不足になっているため、オートメーション化やロボットの導入を推進する方針を打ち出した。また、金融とITを融合した「フィンテック」展開を支援。18年には自動運転タクシーが世界で初めて商用化される見通しとなるなど、最先端の取り組みが進んでいる。

■マレーシア 齋藤眞美編集長

15年には国家財政の約40%を支えた国営石油会社のペトロナスからの歳入が今年も大きく減少する見込み。株価が下がり、通貨のリンギが下落。15年の消費税(GST)の初導入で購買力が低迷。景気低迷後も、外資系企業への税制優遇策を多く打ち出しているが、16年には外国人労働者の政策を大幅に変え、これが新しい投資リスクになっている。外国人労働者を雇用する時、企業は人頭税を払うが、これを大きく引き上げた。また新規受入れを凍結。人材確保難を背景に事業縮小・撤退を検討する企業も出てきている。

■タイ 中島政之編集長

経済は停滞感が漂っているが、改善の兆しが見えてきた。16年8月に新憲法草案が承認された。16年に首都圏鉄道「パープルライン」が開通し、「レッドライン」も控えていて、公共インフラ工事が来年にかけて加速する。タイ経済のけん引役の自動車産業は、足元の新車市場は回復傾向にある。15年は増税前の駆け込み需要があった関係から、16年後半はマイナスを予測するが、来年は上向くのではないか。生産と輸出は年初からの累計でプラス成長を維持しているが、中東とアフリカ、中南米向けが落ちているので、ここが注目点。日系企業の進出も一時はかなり多かったが、今は落ち着いている。サービス業の進出や、ASEANの統括拠点を置く企業が増えている。

■ミヤンマー 八木悠佑・共同通信ヤンゴン支局記者

9月に米国が主要制裁解除を発表した。解除されると対米輸出などで経済の拡大に弾みがつくと期待されている。日系企業は、今後米国が進出してくれば競争が激しくなるという見方。今後の制度作りや、市場開放において米国の意向が反映されやすくなると懸念する声もある。製造業では日本が官民挙げて支援したティラワ経済特区が15年9月に開業し、自動車関連、電子部品企業の進出が始まりつつある。今まで内資と外資を差別する2つの投資法があったが、それを統一する「投資法」が9月28日に下院議会で可決。会社法の改正も近く成立すると言われており、成立すると現地企業への少数株出資や、証券取引所に上場する企業への出資も法律上可能になる。

■フィリピン 大谷聡編集長

16年の第2四半期の成長率は3年ぶりに7%と好調。海外出稼ぎ労働者の送金と、活況のコールセンター業界などが外貨を稼ぎ、内需が拡大。6月に就任したドゥテルテ大統領は人権問題で批判を受けるが、10項目の経済政策は前政権を踏襲。今取り組んでいるのは労働法令改正、税制改革パッケージ、外資規制の緩和を含む憲法改正で、17年くらいから動き出す見込み。現在、外資の上限は40%だが、大統領は50%にすると言っている。労働法令改正などは財閥の既得権益を侵害することになる。契約社員を最も多く雇用しているのが財閥で、どこまで手をつけるのか。急速に改革を進めると反発が起こるので、どこまで改革を進めていくのか注目される。

■インド 須賀毅編集長

インド市場は難しいと言われる。東南アジアほど親日性はなく、非常にプライドが高く、東南アジアでのビジネスモデルが通用しない。税制度や法体系が複雑で理解し難い。ただ、モディ政権は今でも80%という高い支持率があり、その支持率を背景に改革を具現化。その1つがGST。これまで国税・地方税が多くあり複雑な構造だったが、それを整理して簡素化し、17年4月に導入される見通し。16年5月に成立した倒産法により企業の破綻手続きが飛躍的に短縮。これにより外資の流入が増えるのではないかと期待されている。

■インドネシア 安部田和宏編集長兼ASEAN総局長

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安部田和宏編集長兼ASEAN総局長(NNA撮影)

人口、経済でもASEAN一の大国。ただ、資源輸出国ということから原油安で大きな打撃を受けている。中国経済の減速にも苦しんでいる。14年に発足した現政権は、景気浮揚のため15年9月から13本の経済政策パッケージを打ち出している。日本企業が注目したのが外資規制を緩和したネガティブリストの改定。例えば電子商取引は、現地中小企業とのパートナー関係があれば100%できるようになった。課題は経済政策が実行されるかどうか。


関連国・地域: 日本
関連業種: 経済一般・統計

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