大手国営の株式化、日本企業にチャンスとリスク

「ベトナム航空やベトナム石油ガスグループ(ペトロベトナム)など資本金5兆ドン(2億2,430万米ドル、約230億円)超の重点分野の大手国営企業への出資には、リスクとチャンスがあり、注視する必要がある」――。このほど東京都内で開催されたセミナーで、一橋大学大学院・国際企業戦略研究科の布井千博教授がこうした考えを明らかにした。

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中央経済管理研究所のチュン氏(左)と一橋大学の布井氏=東京

セミナーは、同研究科が主催したもので、国営企業改革の原案作成機関である計画投資省系の中央経済管理研究所(CIEM)の幹部らも登壇した。

ベトナム政府は、各業界で最大手級の国営企業を株式会社化する。CIEM企業改革発展委員会のファム・ドク・チュン委員長によると、国営企業の資本を管轄し、首相府が管轄する国営企業の管理会社(専門機関・委員会)開設に向け準備が進められている。現在は事実上、各省庁の管理下にある国営大手各社を、中央政府が一元管理する意図だ。既に同様のスキームとして国家資本投資経営総公社(SCIC)があるが、中小企業が中心であり、新会社はSCICを傘下に置く包括的なものとなる。新会社の社長(委員長)の任命は首相が行う。

しかし、布井教授はこうした過程を経て国営大手企業が株式公開を行っても、戦略投資家になるにはリスクが大きい割に実利が少ない、と語る。その理由として、◇国営企業の株式化後も政府が株式の大半を握る◇持ち株比率が低い割に過大な責任を負わされる◇首相府が管轄するため、さまざまな国家機関や利害関係者が存在している決定権の所在が不透明◇国営企業は財務内容が不透明――といった点が挙げられる。

■国営は多角化で失敗の過去

日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所・地域研究センターの藤田麻衣氏も、直近10年間の国営企業の制度改革は、必ずしも良い方向性を示してはいなかった側面があると指摘する。代表例が、数千億円とされる債務を抱え2010年に経営破綻したベトナム造船グループ(ビナシン)だ。経営責任があいまいなまま金融、不動産、製鉄、運輸などへの多角化を図り失敗。ベトナムを揺るがす大問題に発展した。

ベトナムは07年1月の世界貿易機関(WTO)正式加盟を機に、政府が国営企業に対して補助金拠出ができなくなった。ほぼ同時期に、国営企業もそれまでの総公社(tong cong ty)からグループ(tap doan)へと改組した。しかし、補助金の代わりにグループ内に創設した金融機関から資金調達し、不動産投資に各グループが走った。ベトナム繊維・衣料グループ(ビナテックス)のように、グループ内の互恵が崩れたり、子会社が独自の戦略を構築するなど一体感が欠如するケースがみられたことも藤田氏は指摘した。

布井氏も国営企業は企業統治のあり方や財務が不透明なことが問題であり、ビナテックスのように、株式公開を行い戦略投資家を募っても集まらず、結果的に(畑違いといえる)地場不動産のビングループが名乗りを上げるなど国営企業の株式化は前途多難であると話す。

■飲料メーカーの全株放出が好機

一方で、乳業大手のビナミルク、サイゴン・ビア・アルコール飲料総公社(サベコ)、ハノイ・ビア・アルコール飲料総公社(ハベコ)など優良国営企業は、政府保有の全株式を売却する動きがある。布井氏は、「今後数年間は、外国企業にとっても大きなチャンスだ」と述べ、国営企業買収は、困難さを理解した上で、好機を逃さず注視していく必要性を訴えた。


関連国・地域: ベトナム日本
関連業種: 経済一般・統計金融・保険政治

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